セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
163億円補強でチームを大改造。
進撃のナポリがセリエを席巻す。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2013/08/01 10:31
ナポリ新監督就任会見を行なうラファエル・ベニテス。2010年にインテルを率いて以来のセリエA復帰となる。
チームの尊敬を集める“ドン・ラフェ”。
不安材料は、ベニテス自身が「大きなリスクだ」と指摘している通り、大量補強の反動ともいえる新システムへの変更にある。選手層は相当に分厚くなったが、2年ぶりのCL挑戦を控え、ピーキングの調整などの戦力マネージメントはシーズン中の難題として残る。
だが、イタリアでのセカンド・チャンスに挑むベニテスの表情は晴れやかだ。かつてインテル時代には、約束されたはずの補強がまったく行なわれず、彼は孤立無援のままクラブを追われた。だがナポリには会長をはじめ、フロントの手厚いサポートがある。選手たちと対話を重ねながらチームを掌握したベニテスは、尊敬されるチームの頭として、ナポリ風に“ドン・ラフェ”と呼ばれるようになった。
標的であるユベントスにも苦手意識はない。それどころか、茶目っ気たっぷりに王者と古巣へプレッシャーをかける。
「私はCL('04-'05年大会準々決勝)で、彼らをすでに破っているからね。スクデットを獲らなければならない、という重圧があるのはユーベとインテルの方だろう?」
カバーニ・マネーはナポリに黄金時代をもたらすか。
今夏、セリエAのパワーバランスは、“北のトリノと南のナポリ”という二極化が進んだ。かつて、2つの都市で采配を振るった名将リッピ(広州恒大)は、ナポリを打倒ユーべの一番手にあげる。
「私は、ユーベ時代にフロントから『ジダンをR・マドリーに売る』と聞かされたとき、胃袋に響く一撃を受けた気分がしたものだ。しかし、そのときに得た“ジダン・マネー”が、GKブッフォンとDFカンナバーロ、DFテュラムという3人の超一流選手の獲得とその後につづく黄金時代をもたらしてくれたのだ。今年、ナポリがカバーニを売った代わりに得たものは大きい。歴史はくり返さないとも限らん」
昨季、智将マッツァーリと得点王カバーニが成し遂げられなかったスクデットという夢は、彼らの流出で萎むどころか、逆に新監督ベニテスとFWイグアインら巨大補強によって大きく膨らみつつある。不安よりも期待は何倍も大きい。
今季のナポリは、ただ金にモノをいわせた寄せ集めチームでは終わらない。「ここ(ナポリ)には、リバプールと同じ熱気がある」というベニテスの言葉に、かつてリーガを制し、欧州の頂点を極めた自信がのぞいている。