スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
“仲裁者”アンチェロッティと共に、
マドリーの鍵を握るジダンの存在。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byAP/AFLO
posted2013/07/09 10:31
監督就任会見で穏やかな笑顔を見せるアンチェロッティ(右)とジダン。
アンチェロッティはモウリーニョを越えるか。
そもそも以前から紙面を賑わせていたギャレス・ベイルやエディンソン・カバーニ、ルイス・スアレスらスター性のあるビッグネームではなく、彼らU-21世代の有望株獲得に少なくない投資を行っているという事実は、ペレスの強化方針自体がジダンの意見に影響を受けはじめた証拠だと言える。
ジダンとアンチェロッティはユベントス時代から選手、監督としてお互いを知る旧知の仲だ。その2人が二人三脚でチームを作り、かつジダンが現場の意向をうまくペレスに飲ませることができるようならば、近年レアル・マドリーにずっと欠けてきた重要な要素、一貫性を持ったチーム強化が遂に可能になるかもしれない。
モウリーニョはその一貫性を実現すべく、自身の障害となるものを全て取り除き、あらゆる権力を一人で掌握することを目指した。そのモウリーニョに排除された1人であるジダンが今、目指す一貫性を実現するためのキーマンとなりつつあるのは皮肉な話である。
「ゼネラルマネージャーを兼任するのか?」
入団会見でそう問われた際、アンチェロッティは「私はただの監督だよ」と言って笑った。だが彼は、ジダンという協力者を得て、モウリーニョとは180度異なる方法で、しかしモウリーニョ以上にペレスをコントロールできる監督となるかもしれない。