日本代表、コンフェデ道中記BACK NUMBER
スペインのパスサッカーに思う、
日本代表の“強さ”なき“上手さ”。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byTakuya Sugiyama
posted2013/06/17 11:45
日本代表の中では屈指の身体の強さを誇る本田だが、ブラジル戦では激しいマークにバランスを崩すシーンが何度も見られた。
シャビやイニエスタは簡単には倒れない。
鋭利なカウンターを武器とするウルグアイは、その土台としてディフェンスが固い。激しさと紙一重のダーティさもある。したたかなブラジル人選手が、「ウルグアイにはマリーシアがある」と口を揃えるほどだ。
そのウルグアイが、ディフェンスの局面で四苦八苦するのだ。激しくダーティな対応にも、スペインは動じない。シャビやイニエスタが見せるうまさは、コンタクトプレーへの強さを含んでいるのだ。彼らは簡単に倒れない。
ひるがえって日本である。
ドリブルで敵陣へ突き進んだ本田や香川が、相手のコンタクトにバランスを崩して倒れ込む──ブラジル戦でも見られたシーンだ。直接FKを得た一方で、流された場面があった。試合中の記者席では「ファウルじゃないか」と思うプレーもあったが、スペイン対ウルグアイ戦をテレビ観戦したいまは、違う思いを抱く。
日本はうまいだけだが、スペインはうまくて強い。激しさに対抗できている。世界のトップ・オブ・トップのせめぎ合いでは、「うまさ」だけを切り離して評価するのは意味を成さないのである。
19日のイタリア戦は、「もっとも治安が悪い」街レシフェ。
ブラジリアに残って練習をしている日本代表チームに先立ち、19日のイタリア戦が行なわれるレシフェへ移動した。ブラジリアからは、飛行機で2時間ほどである。
グループステージで日本が試合をする3都市のなかで、レシフェはもっとも治安が悪いと言われている。外務省のホームページでも、注意喚起をしているそうだ。ブラジルの支社で働くメディアの方からも、「レシフェでは特に気をつけてください」と厳しい表情でアドバイスされた。
ブラジル人に聞くと、まったく違う反応が返ってくる。ブラジリアのアパートの大家さんは、「とても、とても、美しい街よ」と声を弾ませた。飛行機で隣り合わせた夫婦も、「最高に素敵な街だよ。サッカーだけじゃなく、あちこちを歩いてみるといい」とアドバイスをしてくれた。「治安が良くないと聞いてるんだけど?」と問いかけると、「まあ、大丈夫じゃない?」と曖昧な答えが返ってきた。
綺麗な花にトゲがあるように、美しい街は危うさを内包するのかもしれない。治安の悪さというスリルが、この街の魅力を引き立てている気がする。
日本代表のサッカーにも、同じようなことが言えるのではないだろうか。「うまさ」を輝かせるプラスαがなければ、世界では戦えない。