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ベルギーGPであからさまに差が出た!!
マクラーレンが持つ驚異的な戦術眼。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byHiroshi Kaneko
posted2010/09/03 10:30
ハミルトンのマシンに装着されたソフトのスリックタイヤ(オプション)が溶けて煙を上げる
フェラーリとマクラーレンの戦略は金曜日から違った。
フリー走行のセッション終了後、両陣営のコメントは以下の通りである。
「天候が断続的に変化したため、とても難しい一日になった。終盤の赤旗中断で、予定していたドライタイヤでの走行時間が減ってしまったしね」(クリス・ダイヤー/フェラーリ・エンジニア)
「ドライバーたちは2人とも、残りの週末を考えてレインタイヤをセーブすることを強いられたため、走行は限られてしまった。ルール上、週末を通して使えるレインタイヤのセット数はウエットが3セット、インターミディエイトが4セットに限られているからね。しかも、今週末は雨が続くという予報だからね」(マーティン・ウィットマーシュ/マクラーレン代表)
トップタイムを出したアロンソのインターミディエイトはすでに摩耗が激しく、使い物にならなくなっていたのに対して、ハミルトンのインターミディエイトはバックアップ用としてまだ使える状態であった。
フェラーリは、マクラーレンに劣る理由の調査を開始。
結果的に土曜日と日曜日のスパはウエットコンディションが長く続かなかったため、インターミディエイトの出番は心配されていたほど多くはなかった。
フェラーリがフリー走行の時点でインターミディエイトを1セット履きつぶしたことは、特に仇とはならなかったのである。
一方、マクラーレンは安定性の高いスリック・ハードタイヤでの走行は思い切って捨て、より軟らかく勝負タイヤとなるであろうソフトタイヤでのデータ収集だけに特化していた。
結局ハミルトンが最後まで首位を独走することになり、アロンソはリタイヤしてしまったベルギーGP。レース後、フェラーリのステファノ・ドメニカリ代表は「なぜウエット路面で速かったわれわれが、ドライで行われた予選とレースでライバルから遅れを取ったのかを調査する必要がある」と語ったが、その理由こそ、この金曜日のフリー走行のタイヤチョイスとデータ収集の微妙な差だったのではないだろうか。
そして、年間王者争いで最も注目されていたベッテル(レッドブル)は、ベルギーGPではいいところなく15位に終わっている。マクラーレンやフェラーリと比較するまでもなく、レッドブルが採った土曜日・予選での戦略は、非常に疑問が残るものだったと言わざるを得ない。