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落合博満は“内角攻め”をこう考えた。
前田智と江村、死球騒動の教訓とは?
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2013/04/27 08:01
日大から社会人のワイテックを経てヤクルトに入団したドラフト4位ルーキーの江村将也。4月23日の広島戦でプロ1勝目を挙げたが、死球を与えた前田智徳が骨折したこともあって苦い初勝利となった。
“投手の聖域”を守るには技術を磨く努力が不可欠だ。
江村は試合後に前田の骨折を知らされると「マジッすか? どうしたらいいんですか……」と絶句。24日の試合前には改めて広島・野村謙二郎監督に謝罪したという。
もちろんこの死球でひるむ必要はまったくない。これからもマウンドでは内角に投げなくてはならないのも言うまでもない。
ただ、である。
あの前田に投じた内角の2球は、いずれも指にかかっていない意思のないボールだったという事実は重い。そのことを江村は、忘れてはならないということだ。
抜けた内角球が1打席で2度もくれば、打者は怒るのは当たり前である。今のままなら、落合が語ったところの「内角に投げる“資格”のない投手」ということなのである。
だから江村にはこれから必死に取り組まなければならない課題が生まれたということだ。
それは内角にただ漫然と投げるのではなく、確実に自分の意思の通ったボールを投げられるようになること――そのために必死に技術を磨く努力をすることである。
それがこれからプロの投手として、唯一、聖域を守っていく資格だからである。