欧州CL通信BACK NUMBER
ドルトムントはレアルにどう挑む?
“武器”を封印したクロップの決意。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2013/04/24 12:25
今季のCLグループステージ、レアル・マドリーとの対戦で1勝1分けの結果を残したドルトムント。しかしクロップ監督(左)は「グループリーグの時とは別のチームになっている」とモウリーニョ監督(右)率いる相手を警戒している。
クロップが胸を張る「アウトサイダー」としての戦い方。
昨シーズン、ドルトムントはCL準優勝を遂げたバイエルンを相手にドイツ国内で3連勝している。リーグ戦終了後に行なわれて打ち合いとなったドイツ杯決勝をのぞけば、リーグでの2試合はバイエルンが終始、主導権を握る試合だった。しかし、ドルトムントはスペースを空けないように耐えながら、終盤にゴールを決めて、いずれも1-0で勝利をつかんだ。そんなバイエルンとの戦いで得た手応えから、クロップは確信を持ったのだ――“ヨーロッパの舞台で結果を残すためには、リスクを減らし、我慢を続け、最後にゴールを狙う、バイエルンを相手にしたときのような戦い方で挑めばいいのだ”と。
これをクロップは「アウトサイダー」としての戦い方と定義する。
奇しくも、今シーズン、レアルとグループステージで対戦することが決まったとき、自信たっぷりにクロップはこう話している。
「我々の歴史を振り返ってみればわかるはずだ。(勝ち抜け)有力チームの一つに入ったときの我々は良くない。しかし、アウトサイダーとしての戦い方なら知っているよ」
つまり、ホームで行なわれる今回の試合でも、ドルトムントはあくまでもアウトサイダー、挑戦者として挑んで来るはず、ということだ。0-0でも問題なし。彼らは極力リスクを排した戦いを選択することになるだろう。
もっとも、決戦を翌日に控えた4月23日、約3700万ユーロ(約48億円)の違約金を払えば自由に移籍できるという契約条項をたてに、ゲッツェが来季からバイエルンに移籍することがバイエルンから発表されるなど、ドルトムントの選手たちが試合に集中できる環境にあるかどうかには若干の疑問符がつくのだが……。
両チームとも慎重な戦いに終始することになるだろう今回の1stレグ。それを凡戦と呼ぶのはあまりに安易だ。
ドルトムントは16年ぶりの、レアル・マドリーは11年ぶりの決勝進出をかけて戦う。歴史の空白はあまりに重い。
積年の思いを背負いながら、ミスの許されない緊張感のもとで選手たちがボールを奪い合う。そのスリルこそが、この試合の醍醐味なのである。