欧州CL通信BACK NUMBER
ドルトムントはレアルにどう挑む?
“武器”を封印したクロップの決意。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2013/04/24 12:25
今季のCLグループステージ、レアル・マドリーとの対戦で1勝1分けの結果を残したドルトムント。しかしクロップ監督(左)は「グループリーグの時とは別のチームになっている」とモウリーニョ監督(右)率いる相手を警戒している。
グループステージでレアルが見せたカウンター戦術。
対するレアル陣営の狙いは、はっきりしている。
グループステージの第3節、ドルトムントに1-2で敗れた直後のこと。モウリーニョ監督は、「我々はすでに勝ち点6をとっていて、ホームゲームをあと2試合残している」と強がった後にこう明かしている。
「試合前、選手たちにはこう話していたんだ。『相手はボールを失った直後に、我々にゴールを奪われることになる』とね。実際、そのとおりになった」
たしかに、前半38分、ロナウドが決めたゴールは自陣でのボール奪取からのカウンターによるものだった。
自陣でロイスのパスをカットしたセンターバックのバランがダイレクトでエジルにつなぎ、そこから左前方に素早く長いボールを送る。そのボールを受けたロナウドが、ペナルティエリアにさしかかる位置からループシュートを決める。この間、約7秒。カウンターのお手本のようなプレーだった。
この試合、ドルトムントは高い位置から無闇にプレスをかけていたわけではないが、攻撃に出るときにはリスクを冒していた。失点シーンでは右サイドバックのピシュチェクが高い位置をとっており、背後には大きなスペースがあった。さらにロナウドをケアすべきボランチのベンダーがあっさり置き去りにされてしまっていた。
焦点は、ドルトムントがマイボール時にどこまでリスクを冒すか。
試合はレアルが1-2で敗れたものの、この1点は示唆的だ。
それは、今回の準決勝1stレグにおいてもレアルは、ホームでの2ndレグを見据え、しっかりと引いて守り、相手が出てきたところ背後のスペースを突く戦いを徹底すれば良い、ということだ。
レアルはドイツでの試合にめっぽう弱く、過去にドイツで行なわれた試合の戦績は1勝6分17敗という惨憺たるものだ。だが、“負けない戦い”に徹すれば良いこの試合を前に、そんなデータなど苦にもならないだろう。
となると、焦点は一つにしぼられる。
ドルトムントが、マイボールのときにどこまでリスクを冒すかだ。
ドルトムントは、過去2シーズン連続してCLグループステージ敗退と、ヨーロッパの舞台で辛酸をなめてきた反省から、「Gegen pressing」(ゲーゲン・プレッシング)を放棄したことはすでに触れた。
その上で、守備のブロックをつくって、そこからのカウンターを武器にしようとクロップ監督が決断した理由は、バイエルンとの戦いから感じるものがあったからだという。