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“ナリタブライアン以来”はあるか!?
ロゴタイプの野望と大混戦の皐月賞。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byKiichi Yamamoto
posted2013/04/13 08:00
皐月賞の2000mは未経験の距離となる2歳王者ロゴタイプだが、田中剛調教師は「2000mにも全然不安はない」と語っている。
勝ち馬どころか、1番人気になる馬を予想するのさえ難しい――。4月14日に行なわれる第73回皐月賞(GI、中山芝2000メートル)は、そんな大混戦の様相を呈している。
今年のクラシック戦線は、牡牝ともに「トライアルをやればやるほどわからなくなる」なんて言われていたが、力関係がわからないまま桜花賞が終わり、牡馬クラシック三冠の皮切りとなる皐月賞を迎えることになった。
牝馬のほうは、チューリップ賞を圧勝したクロフネサプライズが桜花賞を勝っていれば、
――「きっとウオッカやダイワスカーレット級の名牝になるんだろうな」
と多くの人が思い、主役がハッキリして勢力図を描きやすくなったのだろうが、桜の女王となったのは伏兵のアユサンだった。まあでも、終わってみれば、アユサンはデビュー2戦目で重賞で2着になるなど高い素質を見せていたし、去年同様ディープインパクト産駒のワンツーだったし……と、それなりに納得できてしまうのだから、競馬は難しい。
同じぐらい先の見えない牡馬戦線を占うには、皐月賞のゴール直後にタイムスリップした気になるといい。そうして「終わってみれば××だったなあ」と振り返るようにしてみると、いくつかの「××」が浮かんでくる。
「ロゴタイプさん、見くびっていてスミマセンでした」
今、私がもっともありそうだと思っている「終わってみれば……」は、「終わってみれば、やっぱり2歳王者は強かったんだなあ」である。
去年の12月16日、ロゴタイプ(父ローエングリン、美浦・田中剛厩舎)が朝日杯フューチュリティステークス(GI、中山芝1600メートル)を勝ち、2歳王者の座についた。
このレースは、ゴールする瞬間までは、単勝1.3倍という圧倒的1番人気に支持されたコディーノ(父キングカメハメハ、美浦・藤沢和雄厩舎)がどんな勝ち方をするか、がテーマだと思われていた。ところが、コディーノは追い込み及ばず、首差の2着に敗れた。
ロゴタイプの単勝34.5倍という数字が示しているように、この結果はいわゆるサプライズとして受けとめられた。父が、自身GI勝ちのないローエングリンで、さらに3着のゴットフリートも同じ父だったということもサプライズを増幅させた。
朝日杯の勝ち馬、すなわち2歳王者は1994年に三冠馬となったナリタブライアン以来クラシックを勝っていないこともあり、この結果は2013年クラシックと分けて考えるべきだと私は結論づけたのだが――。
3カ月ぶりの実戦となった皐月賞トライアルのスプリングステークス(GII、中山芝1800メートル)で、ロゴタイプが力強く抜け出すシーンを見て、考えを改めさせられた。
間違いなく「本物」の強さを見せつけられ、
――「ロゴタイプさん、見くびっていてスミマセンでした」
と謝りたい気分になった。