プレミアリーグの時間BACK NUMBER
W杯で惨敗したイングランド。
タレント不足はいつ解消できるのか?
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2010/07/20 10:30
ベスト16でドイツに1-4と惨敗したイングランド。ゴールを誤審で認められなかった不運はあるが、最後は粘りを欠いてしまった
要所にプレミアリーグのスター選手を揃え、44年ぶりの世界制覇も夢ではないと思われたイングランド。しかし南アでの現実は、16強でのドイツ戦で、W杯では母国史上最悪の大敗(1-4)という不甲斐ないものだった。
期待を裏切った代表格はウェイン・ルーニーだ。イングランドの主砲は、昨季のマンUでゴールを量産してW杯を迎えた。大会得点王の呼び声が高かったことは言うまでもない。国内では、1986年W杯で伝説の「5人抜き」を披露した、あのディエゴ・マラドーナに匹敵するインパクトを残すことすら期待されていた。だが結果は、相手DFに勝負を挑むことすらままならず無得点に終わった。
3月末に負った足首の怪我から高地への適応失敗まで、不振の原因には複数の説があるが、それにしても、南アでのルーニーにはマンUでの雄姿など見る影もなかった。
ルーニーの活躍はアシスト役に大きく左右されていた。
昨季のルーニーはヘディングでのゴールラッシュで話題を集めたが、クラブにはライアン・ギグス、ナニといった、リーグの昨季アシスト王10傑に名を連ねたサポート役がいる。ところが代表では、昨季から不調続きのエミール・ヘスキーが主にパートナーとなり、さらには昨季末に怪我から復帰したばかりのアーロン・レノンがサイドでの切り込み役を務めることが多かったため、チャンスの供給が乏しかった。
反面、代表で背負うプレッシャーの大きさはクラブレベルを凌ぐ。24歳のCFは精神面の未熟さを露呈してしまった。マンUでは影を潜めていた、ボールを求めて下がる悪癖が初戦(1-1)でアメリカに追いつかれた直後から顔を出し始める。続くアルジェリア戦(0-0)では、焦りからか信じ難いコントロールミスを連発。最後のドイツ戦では、大きく枠を外れたシュート1本に終わり、エースとしての存在感は皆無に等しかった。
怪我で離脱したファーディナンドの穴も埋められず。
拙守でゴールの必要性が高まってしまったことも、ルーニーの精神的な負担を増す結果となった。リオ・ファーディナンドとジョン・テリーが4バックの中央に揃うはずだったが、ファーディナンドは負傷で離脱してしまった。ファーディナンドの不在で責任重大となったテリーは、スピードのなさを洞察力で補うタイプのCBである。判断ミスを犯した場合、チェルシーであればリカルド・カルバーリョ(ポルトガル)のようにフットワークの軽い相棒が後始末をしてくれる。しかし、レドリー・キング、ジェイミー・キャラガー、マシュー・アップソンと、脚力に不安のあるCBがファーディナンドの代役となった代表では話が違う。ドイツ戦で先発したアップソンは、テリーが飛距離を読み誤ったゴールキックに走り込んだミロスラフ・クローゼに、簡単に競り負けて先制点を許した。
最終ラインの前後を固めるGKやボランチに至っては、先発レギュラーですら心許ない状態だった。