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地に墜ちたアズーリ再建の鍵は?
新監督プランデッリが背負う重責。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2010/07/19 08:00
カンナバーロも代表を去った今、守備の再構築などイタリア代表が抱える問題は山積み。プランデッリの手腕が問われる
7月1日、前フィオレンティーナ監督のチェーザレ・プランデッリが、イタリア代表監督の任に就いた。就任自体は大会前に内定していたことだが、南アフリカでの大惨敗によって、彼の双肩には重い使命が課せられることになった。
王座防衛に挑んだ南アW杯で、イタリアは1勝すらできず、グループリーグ最下位で敗退した。100年におよぶ同国代表の歴史のなかで最悪となった成績に国民は怒り心頭。国内メディアも一斉に代表チームを猛批判し、「恥さらしども!」(『コリエレ・デロ・スポルト』紙)、「役立たずの世界王者」(『リベロ』紙)などと容赦なく叩きのめした。『ジョルナーレ』紙にいたっては、ピッチ上に11個の棺を並べた風刺画を1面掲載。「いきすぎだ」とMFペペら代表選手の怒りを買い、論議を呼んだ。
なぜイタリアはここまでの醜態をさらす羽目になってしまったのか? 識者や元代表選手らがさまざまな敗因分析を試みているが、原因はいくつかある。
士気も低下し、堅牢な守備も崩壊していたアズーリ。
リッピ監督は1年前のコンフェデ杯以降、煩雑な戦術変更や、結局は実を結ばなかった「ユーベ・ブロック」の導入など、短期間にあまりに多くのことを詰めこもうとした。また、組み合せに恵まれた欧州予選があまりにイージーだったため、チームとしての一体感や強固な結束力を生む機会を欠いたというのもある。さらには、外国人選手主体で構成されたインテルに牛耳られた国内リーグという遠因もあった。代表は根本的な解決策を見出せないまま本大会開幕の日を迎え、いざ大会が始まっても、リッピの求心力や選手たちのモチベーションは低下していく一方だった。
今大会で代表を引退し、中東のアル・アーリへ移籍したDFカンナバーロは大会を振り返り、「チームにまるで自信がなかった。スロバキア戦で俺たちの歴史的基盤、つまり堅牢な守備も崩壊した。若手にマンマークのやり方を教え直すところから始めなければいけない」と、次世代選手のテクニック低下も深刻であることを指摘した。カルチョの国の威光は、アフリカ大陸の地で粉々に砕け散っていたのだ。
「イタリアがいるべきは世界のトップ4だ」
「戦術にはめ込むのではなく、己が得意とするポジションで実力を発揮できる可能性を選手たちに与えたい。イタリアがいるべきは世界のトップ4だ」
所信表明で新監督プランデッリは気負うことなく言い切った。彼は両サイドを多用する戦術と緻密な戦力マネージメントで、パルマやフィオレンティーナといった中堅チームを勝利に導いてきた智将だ。世界的スターに乏しい現代表の再建にはうってつけの人材と言える。特定クラブとの癒着が揶揄された前任者と違い、中立的なイメージも好ましい。