南ア・ワールドカップ通信BACK NUMBER
平均年齢が24.8歳のドイツ代表。
世代交代と急成長には裏事情アリ!
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2010/07/04 12:50
期待はあった。予感もあった。それにしても、ここまでパーフェクトな勝ち上がりは、大会前には予想できなかったはずだ。アルゼンチンを4-0で粉砕し、3大会連続でベスト4に名乗りをあげたドイツである。
アルゼンチンとは3月に対戦し、0-1で敗れている。ホームで喫した黒星に国内の世論は危機感を募らせ、“ヨギー”ことヨアヒム・レーブ監督は逆風にさらされた。彼の言葉はチームを批判するための材料として使われ、「ドイツは南アフリカW杯の優勝候補ではない」というディエゴ・マラドーナの言葉を、国内メディアは説得力のあるものとして受け止めた。
それがどうだろう。イングランドとアルゼンチンを退け、ルーニーとメッシをシャットアウトしての4強入りである。ここまで5勝5分け8敗と負け越していたアルゼンチンから4ゴールを奪ったのは、19度目の対戦で初めてのことだ。
大会直前まで右サイドのMFで試行錯誤したレーブ監督。
大会前のヨギーには、いくつかの悩みがあった。
ひとつ目が右サイドのMFだった。
セントラルMFのレギュラーだったロルフェスが昨秋に戦列を離れ、1月に復帰したもののすぐにまた病院へ戻ってしまう。ヨギーはバイエルンで新境地を開いたシュバインシュタイガー(シュバイニー)を右MFからセントラルへスライドさせ、空席となったポジションにミュラーを抜擢する。しかし、攻撃のマルチロールとしてバイエルンで活躍する20歳は、国際Aマッチへのデビューとなるアルゼンチン戦で、ほとんどインパクトを残せなかった。
6月3日に行われたボスニア戦で、ヨギーは右MFにトロホウスキを先発させた。W杯前の最後のテストマッチである。最終的な見極めの機会だ。
0-1でリードを許した前半を受け、後半からミュラーが登場する。チームは3-1の逆転勝利を収めた。
得点はラームのスーパーなミドルシュートとシュバイニーのふたつのPKによるもので、ミュラーは3点目のPKをチームにもたらした。26歳で国際Aマッチに30試合以上出場しているトロホウスキか、2度のAマッチ出場でW杯を迎える20歳かという二者択一に、ヨギーは答えを見出したのだった。
グループリーグの初戦から右サイドMFを定位置とするミュラーは、アルゼンチン戦で先制ゴールを叩き出した。ここまでチームトップタイの4ゴールをマークしている。累積警告で準決勝には出場できないが、いまや大会屈指の若手選手として認知されている。