南ア・ワールドカップ通信BACK NUMBER
平均年齢が24.8歳のドイツ代表。
世代交代と急成長には裏事情アリ!
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2010/07/04 12:50
バドシュトバー、ボアテンクと揺れる左サイドバック。
ふたつ目は左サイドバックである。
ラームが早くから左サイドバックに固定されてきた一方で、右サイドバックはボアテンクら複数の選手が起用されてきた。ヨギーにとっては当初、右サイドが懸案事項だったのである。
そこに登場したのがバドシュトバーだ。利き足とポジションの関係を重視するバイエルンのファンハール監督によって、バドシュトバーはセンターバックから左サイドバックにコンバートされていた。所属クラブで台頭著しい21歳に着目したヨギーは、彼を左サイドでも使えると判断し、ある理由からラームを右サイドで起用する構想を描く。
大会直前のテストマッチで慌ただしく確認された布陣は一定の成果をあげ、オプションからファーストチョイスへ昇格した。オーストラリアとのグループリーグ開幕戦に先発したバドシュトバーは、無難に90分を乗り切った。
ところが、セルビアとのグループリーグ第2戦で経験不足を露呈してしまう。CSKAモスクワで本田圭佑のチームメイトでもあるクラシッチに、失点につながる突破を許してしまうのだ。
1トップのクローゼ起用でメディアから猛烈な批判が。
セルビアに敗れた直接的な原因は、前半終了を待たずにクローゼが退場したことであり、後半にポドルスキがPKを失敗したことである。だが、1対1の攻防で劣勢を強いられたバドシュトバーのパフォーマンスが、チームの今後に暗い影を落としたのは明らかだった。続く第3戦から、ヨギーはボアテンクを左サイドバックに起用する。
かつてのようにラームを左サイドとしないのは、攻撃の組み立てに密接にリンクしているからだ。右サイドを中心にゲームを組み立てるエジルをサポートする人材として、ラーム以上の適任者はいないというのがヨギーの絶対的な判断となっているのだ。
また、1対1に強いボアテンクは、ブンデスリーガでロッベンをシャットアウトした実績を持つ。イングランドとアルゼンチンの攻撃力を封じる下支えとなった彼も、まだ21歳の新鋭だ。
さらにもうひとつの悩みが、1トップのクローゼだった。
'09-'10シーズンのブンデスリーガで、わずか3ゴールに終わっていたクローゼの起用こそは、国内のメディアから格好のターゲットにされてきたものである。前半だけの出場に終わったボスニアとのテストマッチでは、老舗専門誌の『キッカー』からチーム最低タイの「5」をつけられてしまうほどだった。