MLB東奔西走BACK NUMBER
名投手シリングの“告発”の行方は?
薬物疑惑をもみ消すMLBの隠蔽体質。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2013/02/23 08:01
レッドソックスの薬物問題に関して、2008年チーム在籍当時の話を証言したカート・シリング氏。過去、最多勝利2回、最多奪三振2回、ワールドシリーズMVPに輝くなど、メジャー屈指の名投手である。
隠すほどに露見する、MLBの恥ずべき部分。
このような証言があったにも関わらず、レッドソックスから事情聴取を行なったMLBは“根拠無し”で幕引きしようとしていたわけだ(結局、この記事の報道の後、MLBは“お咎め無し”との声明を発表している)。
シリングはESPNの公式サイトの記事の中で、MLBの決定について以下のような心境を述べている。
「実際に起こったことだ。それについてチームに伝え、さらに我々の会話を聞いていた他の選手もいた。チームはMLBに伝え、そしてあらゆる人からインタビューを行ない、調査を開始した。それなのに我々の会話が存在しなかったと証言する人がいたとするならば、なぜなのかは解らない。ただ自分は引退し、もう一方の当事者も解雇された今、我々の会話の存在を否定する人物がいても驚きではない」
もちろん、この時点で誰が正直な発言をしているのかは知るよしもないが、もし仮にシリングがこれほど大胆な偽証をしたとするならば、そんな人物を解説者として起用しているESPNの信用問題にも関わるはずだ。それでも同局は彼を解雇しようする動きは微塵も見せていない。
これが何を意味しているのか。
逆にシリングの証言が正しかったとするならば、禁止薬物追放を叫んでいたはずの2008年の段階でも、全員ではないだろうが、選手の健康を管理するスタッフが禁止薬物の使用を促していたということになる。
まさにMLBにとっての恥部と言わざるを得ないだろう。
未だ禁止薬物使用者が後を絶たないMLBの現状。
だが、昨年のバートロ・コロン、メルキー・カブレラ両選手の禁止薬物使用による出場停止処分をみても理解できるように、今なお、マイナーリーグの選手を含め毎年のようにMLBでは禁止薬物による出場停止処分者を出している。
そして今回、ロドリゲスの禁止薬物使用報道と、我々が目にする状況証拠を整理する限りでは、MLBがシリングの証言を消し去ろうとしている構図が見え隠れしていると思われても仕方がないことだろう。