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香川真司が見せた“不思議な笑み”。
レアル戦で受けた世界最高峰の衝撃。
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byREUTERS/AFLO
posted2013/02/14 11:25
世界最高峰の戦いを肌で感じることになった香川。C・ロナウドと競り合った時に感じた喜びと悔しさが、さらに香川を成長させるはずだ。
マンUに攻撃のスイッチを入れさせなかったレアル。
序盤から、ダブルボランチのシャビ・アロンソとケディラ、そしてCBのセルヒオ・ラモスとバランの間でボールを受けることを狙い動いたが、後方から香川に詰めるセルヒオ・ラモスの寄せは想像以上に早かった。
高い位置からプレスをかけ続けるマドリー。ボランチのキャリックも縦パスを出せず、マンUの攻撃はファンペルシに競らせてスペースを狙うというものにほぼ限定されていた。前半19分には香川もその形から裏に抜けかけている。
香川自身、この攻撃パターンにはある程度手応えを感じていたという。
「(ファンペルシと相手との競り合いは)五分五分だったから、ボールが来る回数も多かったし、そこを上手く突いたらいけるんじゃないかなと思っていた。何度か裏に抜けられたし。そういうのをもっと突いて、精度を上げれば良かったけど……残念です」
試合は前半20分にウェルベックのゴールでマンUが先制したが、その10分後にはロナウドに同点弾を決められ1-1となっていた。
香川の下に訪れたチャンスといえば、CKのこぼれ球をシュートした前半34分の場面くらいで、それ以降はボールの受けどころを見つけられない展開が続いた。
マドリーは高い位置からプレスをかけ、マンUに攻撃のスイッチを入れさせなかったのだ。
香川は、悔しさに笑みが入り交った表情を見せていた。
「後ろ向きでボールをうけたり、僕がDFを背負った状況でうける回数が多かった。前向きにボールをもらえる場面を増やしていけば、その中でコンビネーションっていうのは生まれてくる。今日はそれ以前に、なかなか前を向けなかった」
後半は中盤でベンゼマにボールを奪われ、カウンターを受ける場面もあった。自らの持ち味を出せた場面はほとんどなかったということを、香川は誰よりも認識している。しかしそれと同時に、世界最高峰の基準を実際に肌で感じることができた喜びが、悔しさに笑みが入り交じった、あの表情を生んだのだ。