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香川真司が見せた“不思議な笑み”。
レアル戦で受けた世界最高峰の衝撃。
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byREUTERS/AFLO
posted2013/02/14 11:25
世界最高峰の戦いを肌で感じることになった香川。C・ロナウドと競り合った時に感じた喜びと悔しさが、さらに香川を成長させるはずだ。
先制しただけに悔しさも残っていたはずだ。望むような形でボールに触る回数も少なかった。交代は後半19分。もっとプレーしたかったという思いもあったに違いない。
それでも、試合後の香川真司は不思議な笑みを浮かべていた。まるで何か面白いものを見つけたときのような、わくわくしているかのような表情がそこにはあった。
「レアルは正直強かったです。ボールの取りどころもなかなか見つからなかった。ロナウドは世界でナンバーワンの選手だと肌で感じられたし、ひとりひとりのスキル、技術、スピード、フィジカルを比較したときに、僕自身もっともっと成長しないといけない、と。レベルの高さはすごいものがありましたね」
――なんだか、楽しそうですね?
「いや、楽しそうというか、レアルに見せつけられたから……。この現状を深く受け止めないといけないと思います」
香川が生きる形でボールが動くことは、ほとんどなかった。
2月13日のCL決勝トーナメント1回戦1stレグ。試合の前日会見でファーガソン監督は彼の起用を明言してはいたものの、イングランド、スペイン両国のメディアは揃って途中起用と予想していた。
しかしクリスティアーノ・ロナウドとコエントランの左サイドの攻撃力を考慮したファーガソンは、守備でも貢献できるルーニーを4-2-3-1の右サイドに置き、香川をトップ下で先発起用する。
試合前、香川には指揮官からこんな指示が出ていたという。
「バイタルエリアとボランチの裏のスペースでボールを受けて速い攻撃を仕掛けろ」
キックオフ前に香川は、ピッチの上で1トップを務めるファンペルシと配球役のキャリックに歩み寄り、ジェスチャーを交えながら入念に動きを確認した。
ふたりは香川が、相手の「間」でボールを受けるために欠かせない選手でもあったからだ。
しかしこの試合、香川が生きる形でパスが入ることはほとんどなかった。