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2016年までの長期契約を手にした、
「危機感の男」酒井高徳の急成長。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2013/01/29 11:10
シュツットガルトへの完全移籍が発表されたのは1月10日。この移籍でシュツットガルトが新潟に120万ユーロを支払ったとの報道も。
ブンデスリーガ(1部)所属の日本人選手のなかで、酒井高徳は、2012年に最も多くの公式戦でプレーした選手の一人である。
2012年1月にシュツットガルトに加入すると、2011-12シーズンの後半戦の4試合目からスタメンの座をつかみ、シーズンが終わるまでその座をゆずることはなかった。2012-13シーズンの前半戦は、ロンドンオリンピックへの参加で長期間にわたってチームを離れていたために序盤戦こそ出遅れたものの、ライバルの負傷離脱などもあり、しっかりとレギュラーポジションを手にした。
だが、2013年の年明け、酒井は人知れず危機感をつのらせていた。
というのも、昨年12月8日、シャルケ戦でホルトビーへのタックルで退場を命じられるとともに、3試合の出場停止処分を受けたからだ。2012年に1試合、2013年に入ってから2試合の出場がかなわず、出場停止がとけるのは2月2日のフォルトナ・デュッセルドルフ戦からとなる。
出場停止中に、自分のポジションが奪われるという恐怖。
昨年、酒井がシュツットガルトでチャンスを得たのは、左サイドバックのレギュラーだったモリナーロが3試合の出場停止処分を受けたからだった。モリナーロが不在の間にしっかりとアピールしたことで、レギュラーの座を手にしたのだ。
だからこそ、酒井の頭からは危機感が離れることはなかった。
自分のいない間にライバルが活躍してしまえば、自分の戻る場所がなくなってしまう。およそ1年前に、ライバル不在の間にレギュラーポジションの座を勝ち取った経験があるからこそ、危機感は切実なものになって、迫っていた。
そんな中で酒井が考えたのは、シンプルなことだった。
年明け、1月の2試合には出られないものの、冬季キャンプでは後半戦の最初からスタメンで出る選手と同じようなモチベーションで、同じようにコンディションをあげていこう、ということだ。
トルコのベレキというリゾート地で行なわれた冬季キャンプ中に、こんなシーンがあった。