データだけなら、指名できる選手ではなかった江柄子。

　江柄子は春先のスポニチ大会のNTT西日本戦で150kmをマークしたが、その後、夏の都市対抗野球でもあまり結果が出ずに、他チームは指名を見送ったという経緯があった。それを「ボールに力があるし、能力は高い」と判断。データだけだったら、とても指名できる選手ではなかったが、そこから拾い上げたのもベテランスカウトの眼力だったわけである。

　もちろん巨人ばかりではなく、12球団がこうしたスカウトの目を頼りに、新しい戦力の発掘を行ない、経験豊富な指導者の力でそれを育て上げて一軍のグラウンドに送り出している。そのプロの目が根底にあって、初めてBOSというシステムも機能するということなのだ。

　映画はイーストウッドの老スカウトとエイミー・アダムス演じるやり手企業弁護士の娘の親子の物語である。だから野球の細かい部分には目をつぶらなければならないのかもしれないが……。あまりに陳腐なスカウト稼業と球団フロントの描き方に、観ていてどうにもシラけた理由はあるのかもしれない。