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チェルシーCL制覇功労者も解任!
“嫌われ者”ベニテス新監督の評判。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2012/12/07 10:30

チェルシーCL制覇功労者も解任!“嫌われ者”ベニテス新監督の評判。<Number Web> photograph by Getty Images

初采配となった13節マンチェスター・シティ戦でベンチから指示を出すベニテス。昇格組のウェストハムに逆転負けを喫するなど、就任からリーグ戦3試合で2分1敗とチームの調子はなかなか上がらない。

「バルセロナ化」を否定し、守備面は改善の兆しも。

 幸い、 さしもの“ワンマン・オーナー”も、チェルシーの「バルセロナ化」を暫定監督に迫るほど非現実的ではない。ベニテスも、「チェルシーはバルセロナではない」と就任早々に公言。守備面では既に吉兆が窺える。メディアが「無得点」を強調した就任1週目の結果は、見方を変えれば「2試合連続無失点」。前監督末期の失点癖は、解消の方向にある。CBのダビド・ルイスなどは、元DFの評論家の間で「DFとしては使えない」と酷評されていたが、マンC戦では、無闇に持ち場を離れることなく、セルヒオ・アグエロを封じ込める変化を見せた。

 トーレスのサポート役には、ビクトル・モーゼス、マルコ・マリンといった控えの駒もある。バレンシア時代をはるかに凌ぐ2列目の充実は、今夏の100億円補強の結果だが、この戦力アップがあったからこそ、ベニテスは契約を決意したのだろう。昨季は「最短で1年半」と主張して交渉決裂を招いたが、今回は「最長で1年半」という条件を飲んでいる。タイトルも、国内ではリーグを含む三冠、国外では、CLはグループリーグでの敗退が決まったものの、ヨーロッパリーグとクラブワールドカップの二冠という、計5つのターゲットが存在する。

クラブW杯の優勝を逃せば、ベニテスの命運は尽きる!?

 オーナーが、ペップ・グアルディオラを正監督に望んでいることは周知の事実だ。だが、休養中の前バルセロナ監督が、プレミアを新天地に選べば、国内ライバルも招聘を検討するはずだ。

 監督としての仕事環境では、長期政権が実現しているマンチェスター・ユナイテッドとアーセナルはもちろん、マンCでさえ、オーナーの忍耐力でチェルシーを上回る。充電後のグアルディオラが、アブラモビッチのラブコールに応えるという保証はないのだ。

「攻守に見応えのあるサッカーを実現したい」と言うベニテスが、実際に、バランスのとれたサッカーで、トーレスのゴールと共に複数タイトル獲得を実現できれば、契約オプションとしての来季続投も現実味を増す。ファンも手腕を認めないわけにはいかなくなる。

 ベニテスが意識しているはずの正監督への第1歩は、来るクラブW杯での優勝だ。

 プレミア勢にとっては意義が薄いと言われるが、オーナーがタイトルに執着するチェルシーは別だ。アブラモビッチは、やはり軽視されがちな8月のスーパーカップ(CL王者対EL王者)で、A・マドリーに惨敗(1-4)したチームを目にして、ディマッテオへの不信感を強めたとされる。「世界一」の称号を懸けたクラブW杯で同様の醜態は許されない。優勝を逃せばベニテスの最終戦になるとの噂もある。

 昨季のディマッテオ暫定体制は、まさかのCL優勝でハッピーエンドを迎えた。

 初日からファンの更迭要求を耳にしたベニテスが、まさかのハッピーエンドへと向うには、横浜から、今季1つ目のトロフィーと、残る半年間への望みを手に凱旋しなければならない。

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