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3年前にイチローは決断済みだった!?
第3回WBC出場辞退に至る心の流れ。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byNaoya Sanuki
posted2012/11/25 08:01
第2回WBCで、優勝セレモニーの後、じっとトロフィーを見つめていたイチロー。全力を尽くした後に訪れた優勝の感慨は、いかなるものだったのだろうか……。
「選手をいい状態で所属チームに戻す」が最優先の米国。
今回、日本人メジャーリーガーたちがそろって参加を躊躇したのは、ダルビッシュがツイッターで「WBCの結果を知らない選手も多いし米国、ドミニカ、ベネズエラはベストメンバーが出てないから何とも思われてません。これが現実」とつぶやいたように、その空気を日本でプレーしている選手以上に敏感に感じ取っていた結果でもあるのではないか。
元ヤンキースの監督で、今回、アメリカ代表の監督を務めることになったジョー・トーリは、大リーグの公式ホームぺージでこうコメントしている。
「もっとも大事なことは、選手をいい状態で所属チームに戻すこと」
時期等の諸問題を考えるとわからないでもない。だが、開催国の監督としては、たとえそれがフェイクでもいいから、もう少し威勢のいい発言をして欲しいという気はする。
たとえば、オリンピックや、サッカーワールドカップで、代表チームの監督が、このような消極的な発言をするだろうか。
山本浩二が日本代表の監督就任会見のときに「勝負、勝利に向かっていくのが侍ジャパン」と熱を込めて語ったのとは実に対象的だった。
もちろん、時期的な問題さえクリアされていれば、イチローをはじめとする日本人メジャーリーガーたちも純粋に日本球界を盛り上げるために出場するという選択肢はあったことだろう。だが、今回は、開催国であるアメリカのWBCに対するスタンスや、いま置かれている状況などを考え合わせ、最終的な決断を下したのではないか。