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<イラク代表監督として> ジーコ独占告白 「90分間、私は日本の敵になる」
text by
竹澤哲Satoshi Takezawa
photograph byKeita Yasukawa
posted2012/09/10 06:01
日本代表が11日に臨むブラジルW杯アジア最終予選・イラク戦を前に、
インタビューを特別に全文公開します!
日本を離れて早6年。その胸の内には今どのような思いが去来しているのか。
イラク代表の監督として母国ブラジルで開催されるW杯出場を目指すジーコ。
かつて率いた日本代表との試合を控え、闘将の言葉は熱を帯びていました。
ジーコが日本を離れてから6年が経つ。
日本代表監督としてW杯ドイツ大会に臨み、1分2敗でグループリーグ敗退。その直後にトルコのフェネルバフチェの監督に就任が決まったため、消えるように日本を後にした。15年間にわたり日本サッカーに貢献した人物にしては、少し寂しい別れだった。
ジーコは昨夏、W杯アジア3次予選直前にイラク代表監督に就任。見事勝ち抜いたイラクは、抽選の結果、奇遇にも日本と同じ最終予選B組に入った。日本を熟知するジーコが日本代表について抱く思い、そして最終予選への戦略――その胸の内を聞くため、カタールで合宿中の彼を訪ねた。
イラク代表がドーハで合宿をするのは、イラク本国が現在も練習する環境になく、また予選の自国開催を禁止されているためだ。なぜそのような厳しい環境にある国の監督を引き受けたのだろうか。にこやかな表情で現れたジーコは、まずその理由から話し始めた。
「もう一度ワールドカップに出場できるかもしれないということが大きな動機となった。イラク本国は現在も困難な状態が続いているが、それを乗り越えて行こうとする選手たちの気持ちは強く、闘争心もある。私自身にとっても大きな挑戦なのだ」
日本がオマーンを破った日に、イラクはヨルダンとアウェイで戦っている。先取点をとりながら追いつかれ、結局1-1で引き分けたのだった。
「結果にはまあまあ満足している。常に勝利を目指して戦っているのだが、ミスから同点に追いつかれてしまったのは残念だった。しかしミスをするのは仕方がないし、アウェイであり、しかもヨルダンという優れたチームが相手であることを考えれば、勝ち点1は悪くない結果と考えるべきだろう」
アテネ五輪4位の“黄金世代”が中核のイラク代表に施した指導。
イラク代表は'04年アテネ五輪で4位になり、そして'07年のアジア杯で優勝している。その2大会に出場した“黄金世代”とされる選手たちが現在も代表の中核を占めている。'07年アジア杯得点王となったユニスをはじめ、ケラル、ナシャト、ハウルと攻撃陣には優れたタレントも揃っている。
「テクニックがあり攻撃的なのだが、中盤からディフェンス・ラインにかけても、しっかり統率するよう、チーム全員に指導している。この10年間で入れ替わった選手が半分であり、30歳を超える選手たちが半数を占めている。若い選手たちは、このような公式戦を戦ったことがなく、経験不足は否めない。年齢的に高い選手が他のチームに比べて多いが、暑さの中で戦えるフィジカル・コンディションであることはヨルダン戦で確認でき、この点については安心した」