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<イラク代表監督として> ジーコ独占告白 「90分間、私は日本の敵になる」
text by
竹澤哲Satoshi Takezawa
photograph byKeita Yasukawa
posted2012/09/10 06:01
久保竜彦は高い身体能力を持つ貴重なFWだったが……。
世界を見渡せば、ドログバ、イブラヒモビッチ、マリオ・ゴメスといった背の高いフォワードが普通となってきている。まだ日本には背の高い選手は少ないので、スピードと早いパス回しで対抗しようとしている。私が監督をしていたときは、背の高い選手を揃えたチームを相手に苦戦させられた。できるだけコーナーキックやフリーキックをとられないようにしたものだ。当時、日本代表で背が高かったのは久保ぐらいだろう。高い身体能力を持っていたのだが、怪我が多く、W杯には連れて行くことができなかった」
一方で、ジーコが日本を離れてからの6年間に日本サッカーも大きく変わってきている。数多くの才能が花開いたことは、ジーコ自身も認めている。
本田のCSKAモスクワ移籍には、ジーコの進言があった!?
「日本代表はさらによくなってきている。素晴らしい選手がたくさん現れてきているからだ。長谷部、遠藤、前田は大きく成長した。駒野や遠藤は私と一緒にやっているし、前田も当時から前線のオプションというべき存在であり、招集したこともあった。岡崎の出現も大きい。本田については、代表監督として名古屋グランパスの試合を観に行ったときに、名古屋の監督のネルシーニョから期待している選手だと聞かされた。私も当時から注目していたが、その後、本田は成長し、オリンピック代表にも選ばれた。私がCSKAモスクワで監督をやっているときに、彼を獲得することを進言したのだ」
ジーコはこちらから尋ねてもいないのに、次々に日本人選手の名前を挙げてみせた。
「香川はビッグネームの一人になったが、彼が日本にいる頃は知らなかった。ドルトムントでやるようになって彼の存在を知った。素晴らしい活躍を目にして、ビッグクラブに入るのにふさわしい資質を備えていると感じた。アジアカップの時も、彼が怪我をしていなかったら日本代表はもっと簡単に優勝していただろう」
ジーコが、日本を離れてからもずっと、かつて率いた代表チームを意識し続けてきていることは明らかだった。注目を集める両翼の2選手へも話は及ぶ。
「ザッケローニを監督に迎えたのは、日本にとってよいことだった」
「サイドバックというポジションは、守備をすることがまず大切だ。スピードがあればオーバーラップをして2対1の局面を創って相手を脅かすこともできる。いつも前にいくのではなく、状況を判断し、サプライズを起こせばよい。しかしまずはしっかりと守備をすることだ。長友と内田は、2人ともとても素晴らしいサイドバックだ。インテルのようなチームでレギュラーをとることは並大抵のことではない。内田もシャルケで活躍しているし、将来有望な選手だ。2人ともビッグクラブで活躍しているだけに、強い相手と、また重要な試合を戦う機会も多い。彼らにとって大きな経験となるだろう。彼らの経験が代表にもたらされるのはとても重要なことだ。
ザッケローニ監督も、日本に適切なサッカーを指導している。監督を務めたウディネーゼやミランでとても高いクオリティのサッカーをやってきたが、それを現代表に活かしている。彼を監督に迎えたことは日本にとってよいことだった」