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<イラク代表監督として> ジーコ独占告白 「90分間、私は日本の敵になる」
text by
竹澤哲Satoshi Takezawa
photograph byKeita Yasukawa
posted2012/09/10 06:01
日本の厳しいしつけが影響を及ぼした“デメリット”。
様々な異文化に触れてきた彼が、日本で理解することが難しかった文化は、日本サッカーの質とも密接に関わっていた。
「日本の学校でのしつけは世界的に見ても厳しいものだと思うが、それがサッカーの指導にも影響していた。私が鹿島にいたとき、ユースの選手が初歩的なミスをしたりすると、厳しく罰せられていた。私はミスをするのは誰にでもあることだから、それを叱ったりするのはよくないと主張した。家庭でのしつけや学校での教育、そのような日本文化を私は否定するものではない。しかしサッカーにおいては別の文化が存在するのだ。ミスを恐れることなく自由に、イニシアティブをもってプレーすること。そのことを理解することが日本人にとっては一番難しいようだった。
サッカーで大事な個々での状況打開が、日本人は苦手なようだ。
日本では常にチームとして目標を達成するということだけに主眼が置かれる。しかしサッカーにおいては個々が状況を打開して問題を解決しなければいけない局面も多い。日本人はそのあたりがなかなか苦手な国民のようだ。たとえば、決定力不足。以前に比べて良くなったが、そもそもの原因は、ミスをするのが怖いという気持ちから、本当にミスをしてしまうところにあるのだろう。重要な試合ではチャンスは1回か2回しかないかもしれない。そこでしっかり決められるかどうかが勝敗の分かれ目なのだ。そういったことをよく私は日本人選手たちに話したものだった。
日本人はサッカーに必要な野望を持つのが苦手だ、とかつて私は語ったことがある。野望というものはエゴとは異なる。野望というのは征服したいという願望だ。サッカーは相手を征服した勝利者のみが生き残れるスポーツなのだから、勝利者になるという願望は持ち続けるべきなのだ」
「日本食はサッカー選手にふさわしくない」と語る真意。
さらにジーコは、日本代表のフィジカル面での問題へと話を続けた。
「もう一つ言えるのは食生活の問題だった。日本食はとても素晴らしいものだし、健康的だ。しかしサッカー選手にとってふさわしいものだとは言えない。私が日本代表監督を務めた4年間で、7人の選手が骨折した。どう考えても尋常ではない数字だ。骨折をするのもカルシウム不足が原因だった。中田は当時ヨーロッパで別のタイプの食生活をつづけていたから、並外れたフィジカル・コンディションを維持できたのだ。唯一、彼が負った怪我は恥骨結合炎だった。
現在ブラジルでは13歳でクラブに入るようになってきているので、その段階から食事療法を指導される。日本は以前、高校卒業時にプロを目指すのか選択する選手が多かったが、今はもっと早くなってきている。プロを目指すのなら、少年期から炭水化物やカルシウムを多く含んだ食事をとる必要がある。