リーガ・エスパニョーラの愉楽BACK NUMBER
レアル上層部を“先制口撃”!!
モウリーニョ監督就任の舞台裏。
text by
中嶋亨Toru Nakajima
photograph byMutsu Kawamori
posted2010/06/03 10:30
5月31日、ベルナベウで就任会見に臨むモウリーニョ。会見は希望通り報道陣のみを対象としたものだった
モウリーニョに期待される新生レアルの姿とは?
マドリディスタたちの要求は、どのクラブのサポーターより厳しい。また、いかに攻撃的なチームを作ろうとも、一度の取りこぼしでタイトルを逃すのがリーガだ。今季、ペジェグリーニは勝ち点96を積み上げたが(昨季のバルセロナが87で、今季は99)、タイトルには手が届かなかった。
そのモウリーニョが、どのような新生レアルを作り上げるのか。変幻自在にボールを動かしながら相手を揺さぶり、守備網を完全に切り崩す。そういうチームがスペインでは“良いサッカー”をしていると評される。
そのサッカーでリーガを制するには、バルセロナを凌駕する必要がある。つまり、モウリーニョに課されているのは、バルセロナの“世界最高の攻撃サッカー”を超えることだ。
「バルダーノは彼の仕事をし、私は私の仕事をする」
これからモウリーニョによるチーム作りが始まるわけだが、先にも書いたように、すでにクラブ幹部の“言いなりにはならない”という姿勢を示している。その中でも、バルダーノGMに対しては、はっきりと宣戦布告を突きつけている。
「バルダーノは彼の仕事をし、私は私の仕事をする。強化部の仕事は、私が求める選手を獲得することで、私の仕事はその選手たちと共に最高の準備をすることだ。ロッカールームで自分の意見を言うことが強化部の仕事ではない。私は彼らの仕事には最大限の敬意を払う。例えばインテル時代、私はカルバーリョ(チェルシー所属のポルトガル代表DF)の獲得を希望したが、強化部のブランカは『ルシオはどうだ?』と提案してきた。今季のルシオの活躍を見れば、ブランカの決断が正しかったことがわかる。だから私は、強化部のスタッフの意見には常に耳を傾ける。だが、彼らが私の仕事に手出しすることは許さない。それが守られない環境で監督という仕事をしたくないし、監督をする必要もない」
今季開幕前、スナイデルとロッベン自身が残留を希望し、ペジェグリーニもチーム構想に彼らを加えていたにもかかわらず、バルダーノGMは彼らオランダ代表選手2人を強引に放出した。チーム強化というより、個人的意向で選手の移籍を主導するバルダーノに対しては、スナイデルが「レアル上層部には何人かのマフィアがいる」と毒づいたほどだ。だからこそ、モウリーニョは早々に先手を打ったのだろう。