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それでいいのかイングランド!
日本戦で露呈した3つの危機とは? 

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田邊雅之

田邊雅之Masayuki Tanabe

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posted2010/06/02 10:30

それでいいのかイングランド!日本戦で露呈した3つの危機とは?<Number Web> photograph by Getty Images

「日本のシステムは(4-1-4-1ではなく、9人で守る)9-1じゃないのか?」

 5月30日に行われた日本対イングランドの親善試合。カペッロは試合後の記者会見で、日本のサッカーをこんなふうに揶揄した。

 だが、イングランドが苦戦した――オシムの表現を借りれば「試合開始70分まで、どちらがイングランドか分からないような内容になった」――のは、岡田監督が守備的な戦い方をしたからではないだろう。

 むしろこの試合では、日本どうこうというよりも、スリーライオンズ(イングランド代表)が抱える三つの大きな不安が、自然と浮き彫りになったという印象の方が強かった。

守備のほころびが徐々に広がる“スリーライオンズ”。

 まずはCBの守備。

 かつてファーディナンドとテリーのコンビは、ヨーロッパ各国代表の中でも最強のCBコンビと言われていたが、残念ながら今は見る影もない。故障のために昨年の10月末から3カ月近く試合を欠場したファーディナンドは存在感が薄く、一方のテリーも数年前に背中を痛めて以来、コンディションが落ち続けているという説を裏付けてしまうようなパフォーマンスだった。

 セットプレーで闘莉王に先制点を決められたシーンはともかくとして、二人は岡崎を止めるのに手こずっていたし、同時にジャンプしながらヘディングで本田に競り負けるという、信じられないような場面さえあった。

 そして、このような不安をさらに深刻にしているのがGKやSBの人材難だ。

 GKは前半がベテランのジェームス、後半が赤丸急上昇中のハートという顔ぶれになったが、どちらも良く言えば及第点、悪く言えば「普通」の出来に留まった。

 普通なのはSBも変わらない。グレン・ジョンソンは相も変わらず微妙だし、キャラガーは代表チームに貢献しようという心意気は高く買えても、やはりプレーのレベル自体はスタンダードだった。

 W杯のような国際大会では、どのチームも慎重な戦い方をすることが求められる。決勝トーナメントに入ると、なおさら失点は命取りになる。カペッロが本気で「決勝進出が最低のノルマ」だと考えているなら、特にファーディナンドをバックアップ要因と交代させることまで含めて、かなり思い切った手を打たなければならない瞬間がやってくるかもしれない。

本来のアンカーを欠くイングランドは中盤が機能不全に。

 イングランドが抱える二番目の不安は中盤の底だ。先に書いたように、DF陣が安定感に欠ける場合には、中盤の底でプレーするアンカー(抑え役)と呼ばれる選手が、相手の攻撃の芽をいかに潰せるかどうかが重要になる。

 本来、このポジションに起用されていたのはバリーだが、彼は5月5日に足首を痛めて以来、回復待ちの状態が続いている。今回はバリーの代役にハドルストーンが抜擢されたが、彼は守備に集中するわけでも攻撃の起点になるわけでもなく、中途半端な位置で横パスを出すことしかできなかったため、ゲームプランは崩壊。結局ランパードが深い位置まで下がり、守備までケアする羽目になってしまった。

【次ページ】 イングランド代表の要となる守備的MFバリーの不在。

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