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レアルとアヤックスの共通項は何か。
プラットフォームビジネスを考える。 

text by

葛山智子

葛山智子Tomoko Katsurayama

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photograph byGetty Images

posted2012/05/29 10:30

レアルとアヤックスの共通項は何か。プラットフォームビジネスを考える。<Number Web> photograph by Getty Images

17歳でアヤックスのトップチームにデビューしたデニス・ベルカンプは、ヨハン・クライフ監督のもとUEFAカップ優勝に貢献。インテルを経てアーセナルへ移籍すると、1997~1998シーズン、2001~2002シーズンにはリーグ優勝とFAカップ優勝の2冠を達成するなどの活躍をした。

レアルの顧客の増やし方。

  

 年次報告書「Real Madrid 2010-2011 annual report」によると、レアルは約40社とのスポンサー契約や広告契約を結び、5200万ユーロの収入を得ている。さらに、ライセンス契約企業なども含めると340以上もの企業と取引をし、2億4000万ユーロの収入を得ているのである。

 多くの企業がレアルとパートナーシップを組むことに価値を見出せば見出すほど、クラブへの収入は増加する。そこで得た資金を元に、多くのスター選手や監督、スタッフをさらに獲得できる。その結果、一層多くのファンがレアルの試合をさらに楽しむ。レアルに注目するファンが増えれば、企業にとってもレアルとのパートナーシップにさらなる価値が生まれる。

 このようにレアルは、世界一の数を誇る2億2800万人のレアルファン(2006年ハーバード大学の調査より)と、そのファンにマーケティングバリューを見出すアウディやコカ・コーラのような企業とを結びつけ、両者に提供できる価値を向上させ続けることで、さらにファンや企業の数を増やしているのである。

アヤックスが結びつける若手選手とビッグクラブ。

  

 では、前回レアルと共に取り上げたアヤックスはどうだろう。

 アヤックスは、スター選手獲得に奔走するビッグクラブの需要を狙うべく、若くて無名の選手を育て上げることに注力している。その育成機関として、彼らは世界屈指といわれるアヤックスアカデミーを持っている。

 プロとして活躍する選手を多く輩出するためには、素質があり、かつ人間性にも優れたプロの卵をアヤックスアカデミーに集めなければならない。そのためには、アヤックスアカデミーがビッグクラブで活躍するための登竜門として認識される必要がある。

 その点で、アーセナルに移籍して活躍したデニス・ベルカンプや、バルセロナなどで一緒にプレーした双子のデブール兄弟、パトリック・クライファートなど歴代の名選手を送り出した実績があり、現在もスナイデル(インテル)、クラレンス・セードルフ(ACミラン)、マールテン・ステケレンブルク(ASローマ)、ラファエル・ファンデルファールト(トッテナム)など、著名な選手が活躍していることは、アヤックスアカデミーにとって申し分ない実績である。

 アカデミーを卒業した選手が活躍をすればするほど、より多くのビッグクラブからの期待がアヤックスに集められる。より多くのビッグクラブが、アヤックスアカデミー出身の選手を獲得するようになればなるほど、若手選手にとってアヤックスアカデミーがビッグクラブでの活躍の足がかりと認識される。そして、多くの優秀な若手選手がアカデミーに集まるため、さらに多くのビッグクラブの目を引くこととなる。

 このようにアヤックスも、アカデミーを通して、若手選手とビッグクラブを結びつけることで顧客を増やしながら、自らの利益モデルを構築しているのである。

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