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レアルとアヤックスの共通項は何か。
プラットフォームビジネスを考える。 

text by

葛山智子

葛山智子Tomoko Katsurayama

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photograph byGetty Images

posted2012/05/29 10:30

レアルとアヤックスの共通項は何か。プラットフォームビジネスを考える。<Number Web> photograph by Getty Images

17歳でアヤックスのトップチームにデビューしたデニス・ベルカンプは、ヨハン・クライフ監督のもとUEFAカップ優勝に貢献。インテルを経てアーセナルへ移籍すると、1997~1998シーズン、2001~2002シーズンにはリーグ優勝とFAカップ優勝の2冠を達成するなどの活躍をした。

フェイスブックとグーグルのプラットフォーム戦略。

 ここまで、両クラブの「顧客を増やす仕組み」をみてきたが、この考え方は「プラットフォームビジネス」を応用した仕組みと言えよう。

 このプラットフォームビジネスの成功例として有名なのはグーグル、アマゾン、フェイスブックなどである。

 今月18日、ナスダック市場に歴史的な上場を果たしたフェイスブックは、公開時の時価総額が1000億ドルを超えた。無料で登録でき、かつ友達同士での情報共有形式の自由度が高いことから、既存ユーザーが友人に登録を勧めることもあり、世界中で多くの人々が利用登録をするようになっている。

 多くの人が登録すればするほど、友達を探しやすくなり、フェイスブック上で頻繁にメッセージの送受信をするようになるため、他のプラットフォームにスイッチしにくくなる。今や、フェイスブックの利用者は世界で9億人以上といわれている。

 フェイスブックは2011年の収入37億1100万ドルの大部分を広告収入から得ているが、この利用者を集める仕組みこそが、ビジネスの肝になる。より多くの人が利用すれば、その利用者を対象にプロモーションする企業が増えるため、収入に結びつくのだ。

 グーグルやアマゾンもまた、同じような仕組みを構築している。グーグルは、高度な検索機能、スケジューラー、Gmailなどの利用者を増やし、広告企業と結びつけている。アマゾンは、一般消費者とメーカーを結びつける場を提供している。

 アマゾンでショッピングする利便性が上がれば、多くの人がアマゾンに集まる。多くの人が集まれば、メーカーにとっても販売チャンスが増える。従ってより多くのメーカーが販売を開始する。そして、多くのメーカー商品がアマゾンに集まれば、さらに多くの人々がアマゾンでのショッピングを楽しむことができるのだ。

 ここまで見てきたように、プラットフォームを築く上で重要なのは

(1)ユーザーが増えれば増えるほど享受できるメリットが拡大し、口コミでさらにユーザーが増える仕組みをつくる
(2)ユーザーのスイッチングを防ぐような、プラットフォームへの粘着性を築く
(3)プラットフォームという「場」の質を担保する仕組みを構築する

 ことである。

課金する相手は直接の顧客でなくとも良い。

 何も有名企業ばかりがこの考え方を取り入れているわけではない。みなさんの周りにも多く存在する。たとえば、ショッピングモール。アマゾンの仕組みと非常に似ているが、ショッピングモールにより多くのショップが入れば入るほど、集客力が増し、集客力が増せば増すほど多くのショップがテナントに入り、集客がアップする。そしてバラエティに富んだショップが入れば、人々はそのショッピングモールで一通りの買い物ができるので、他のモールに行く必要がない。このように、ショッピングモール自体がプラットフォーム化していることがわかる。

 読者も、この考え方を参考にしながら、自社の顧客を増やしていく仕組みについて考えてみてほしい。

 そして、もう1つ。アヤックスアカデミーやフェイスブックの事例のように必ずしも直接のサービス利用者(若手選手、ユーザー登録者)に課金をする必要がないことがわかったことと思う。自社の顧客が増えればそれに価値を見出す人が出てくる。そのようなグループを創りだすことにより、読者の会社の利益モデルも様々なパターンを見出すことができる可能性がある。自らがプラットフォームとなり、そしてそのプラットフォームの価値を認めるような新たな顧客を見出すことも、これからのビジネスモデルには必要になろう。

 次回は、顧客を増やすマーケティングアプローチについて、日本のランニング市場を参考に考察を深めていきたい。

今回のポイント

(1) 自社と顧客がつながっていること自体に価値を感じる、第3のポテンシャル顧客の存在を考える(新たな利益モデルの創出機会)
(2) 自社の顧客(+ポテンシャル顧客)を増やすためには、口コミ効果と粘着性が効果を発揮する
(3) 顧客数にばかり目を奪われず、ルールや規範などで「場」のクオリティをコントロールする

参考:東洋経済新報社「プラットフォーム戦略」平野 敦士 カール, アンドレイ・ハギウ

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