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主力を欠いても楽天はなぜ勝てる?
星野采配で光る“どろんこ3兄弟”。  

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byKyodo News

posted2012/05/23 12:05

主力を欠いても楽天はなぜ勝てる?星野采配で光る“どろんこ3兄弟”。 <Number Web> photograph by Kyodo News

守備で悩み、開幕から4キロも体重を減らしてしまったという銀次。銀次に関しては守備の不安を語っていた星野仙一監督も、阪神戦の後には「ええ仕事をするな」などとベタ褒めだったという。

「今は、『どろんこ3兄弟』がチャンスをもらっている」

 鈴木康友内野守備走塁コーチは言う。

「この3人は『どろんこ3兄弟』といって、キャンプのアーリーワークから始まって、泥んこになりながら、猛練習してきたやつらなんです。守備コーチという僕の担当からすると、起用に関して言えば、二遊間に守備の安定感がある内村を我慢して使ってほしいというのはある。でも、内村はこの前の広島戦では大事な場面でバントの失敗があった。チーム事情でもっと点を取りたいというのもあるし……今は、『どろんこ3兄弟』の彼らがチャンスをもらっているということだね」

 3人にはレギュラーになってもおかしくないだけの持ち味がある。

 銀次は類まれなミートセンスを誇り、投手の左右を気にしない。独自のミートポイントをもっている。「追い込まれるまでは基本的にはストレート狙いで、追い込まれたら、おっつけていく」と銀次。その打棒は、昨季のイースタンリーグの首位打者というタイトルが実証している。今季も、出場機会が限られているとはいえ、打率3割台をキープしている。

 枡田は、2年目の'07年にデビュー。デビュー戦で適時打を放ち、Kスタ宮城のお立ち台にも上がっている。同年にはイースタンリーグ優秀選手賞となるなど、もはや二軍の選手ではない。銀次と同じく、左投手を苦にしないバットコントロールのうまさが光る巧打者だ。今季は開幕一軍を果たしたものの、その後、二軍へ降格。先の松井の離脱により、再昇格を果たしていた。

 2年目の阿部は俊足好打者の内野手だ。ルーキーイヤーの昨年は代走・守備固めで経験を積み重ねてきた。今季は開幕一軍入りを果たし、一度も降格することなく定着している。スタメン起用も、徐々に増えている。

では、なぜ『どろんこ3兄弟』はレギュラーに定着しないのか?

 一方で、彼らに欠点があるのもまた事実なのだ。

 それが、松井の離脱、内村の不調があってもレギュラーに定着しきれない要因となっている。

 鈴木コーチは続ける。

「ほんとにね、僕の担当の立場で話をすると、3回で5点を取ったらもう守備固めにして欲しいくらいなんです。3人とも一生懸命頑張っているけど……銀次は元捕手というのもあるし、守備に課題がある。枡田はジャックル癖が抜けないし、肩も強くない。阿部に関しては、だいぶ安心して見られるようになったけど、まだ内村ほどではない。守備コーチとしてはそれが本音なんですよ」

 この2連戦で銀次は、1戦目で阪神のエース・能見から2安打を放って勢いに乗ると、2戦目は4打数4安打と大当たり。甲子園の大観衆を沈黙させた。1戦目のあと、銀次はこんな話をしていた。

「能見さんを打てたのは自信にはなりますけど、左投手を苦にしないから僕が起用されていると思っているので、持ち味は出せたかなと思います。起用は短いですけど、すぐに代えられてしまうとか考えて試合には出ていないですね。自分が先発で出た時には、自分の力を出すことしか考えていないし、準備はできている。常にレギュラーを目指しています。誰よりも練習を積んできたと思っていますから」

【次ページ】 枡田は「開き直って」今季初安打を記録。

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