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主力を欠いても楽天はなぜ勝てる?
星野采配で光る“どろんこ3兄弟”。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKyodo News
posted2012/05/23 12:05
守備で悩み、開幕から4キロも体重を減らしてしまったという銀次。銀次に関しては守備の不安を語っていた星野仙一監督も、阪神戦の後には「ええ仕事をするな」などとベタ褒めだったという。
枡田は「開き直って」今季初安打を記録。
2戦目に守備で2つのミス。ルーキー釜田佳直のプロ初先発の足を引っ張ったことで目立ってしまった枡田は2試合で4打数2安打。1戦目の1安打は13打席目(打数は8)にして、今季の初安打だった。
「今回もチャンスだというのは分かっていましたけど、今までもずっと僕はチャンスを逃してきていたんで……ただ、今までは考えすぎていた。ここで結果を残せばレギュラーを獲れるかも、と。今日は開き直っていきました。今シーズン、ヒットが出ていなかったので、1安打が出て、ちょっとホッとしました」
枡田の置かれている状況は厳しい。そもそも、智弁学園時代は腰高を理由に外野手だった彼が、プロに入って遊撃手を務めているということに無理があるのだが、そこに目をつぶってでも、起用したくなるだけの期待が彼にはあるのだろう。
「楽天も創設8年目。そろそろ内野手に生え抜きの選手がほしい」
2戦とも、銀次、枡田は途中で退いた。
阿部も阪神戦の2戦目、守備にミスが相次いだ枡田の後に途中交代で入ったのに代打を送られ、試合終了を再びベンチで迎えている。
今はまだ、彼らは西村、内村の守備のスペシャリストの後塵を拝しているかもしれない。しかし、松井や不調の内村を補う彼らのパフォーマンスが、今の楽天にとって欠かせない要素になっているのも事実だ。さらにいえば彼らこそ、楽天の浮沈のカギを握る存在なのかもしれないのだ。
鈴木コーチはいう。
「松井が歳だって言うけど、やはり、彼の身体能力はさすがのものがある。彼が帰ってきたら、3番ショートは彼のものになる。今でもいい選手ですよ。ただ、楽天も創設8年目。そろそろ、内野手に生え抜きの選手が出てきてほしいというのはある。外野手は聖澤がでてきたし、キャッチャーには嶋がいる。ピッチャーも田中、塩見貴洋が引っ張り、釜田も出てきた。補強という部分で外国人の力も必要だけど、内野陣の若手に頑張ってもらわないとね。松井がいない間がチャンス……う~ん、そうだね。チャンスやけど、ピンチでもあるかな。それくらいの気持ちでやってほしい」
星野監督が見せている起用法は、松井の穴を埋めるべく編み出した苦肉の策といえるだろう。着実に勝利を拾えているのは、闘将の百戦錬磨の采配があるからだ。選手は我慢強く使ってこそ育っていくものだが、今のチーム事情を考えると、このまま戦っていくしかない、というのが本音なのかもしれない。
銀次、枡田が打ち、さらには阿部までが出場する。そして、リードすれば内村、西村が守る。
「どろんこ3兄弟」は微妙な立ち位置の中、楽天にちょっとした新風を吹き込んでいる。