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<ナンバーW杯傑作選/'93年4月掲載> カズの向こうに世界が見える。 ~Jリーグ開幕とW杯への夢~ 

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鈴木洋史

鈴木洋史Hiroshi Suzuki

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photograph bySatoru Watanabe

posted2010/05/07 10:30

<ナンバーW杯傑作選/'93年4月掲載> カズの向こうに世界が見える。 ~Jリーグ開幕とW杯への夢~<Number Web> photograph by Satoru Watanabe

カズの活躍がそのまま日本代表の快進撃に重なった。

 だが、読売残留を決めて吹っ切れたカズは、何かに憑かれたかのような勝負強さを見せ始めた。8月のダイナスティカップ、9月から11月のナビスコカップ、10月から11月のアジアカップで、大事なゴールにことごとくからみ、3連続MVPを獲得。釜本との比較論まで語られる存在になっていく。

 カズのそうした活躍はそのまま日本代表の快進撃に重なった。

「フロックにしろダイナスティで優勝したことでひと回り大きくなり、今度はその力でアジアカップを制し、そのことでまたひと回り大きくなりましたね」

 と、Jリーグチェアマン兼強化委員長の川淵三郎が言う。

 ここに至って'85年以来再び、世界が見え始めたのだ。

 それとともに、失われていた日本代表へのアイデンティティも蘇ってきた。

 早くから日本代表とワールドカップ出場へのこだわりを示していたのもカズだ。カズはブラジル時代から、日本に帰国するたびに、

「夢は日の丸をつけてワールドカップに出場すること」

 と、語っている。

代表ユニフォームに「日の丸」マークが入るまで。

「ブラジルで苦労したカズ、そして長い間日本で苦労して日本に帰化したラモスの2人は、とりわけ日本代表に名誉を感じているんだと思います」(横山謙三元日本代表監督)

 日本代表でのカズの存在が大きくなるにつれ、そうした意識は他の選手にも自然と伝播していく。ついには去年のアジアカップの前に代表のユニフォームを新しくする際、選手たちの提案で左腕の所に日の丸のマークを入れるまでになったのだ。

 日本代表が世界への期待感をもたらすと、より多くの人々がサッカーに関心を持つようになった。

 久々に誕生するプロスポーツにあらゆるマスコミが押しかけ、サッカーを巡る話題が途切れずに提供され、10月のナビスコカップ準決勝あたりから観客動員も大幅にアップした。

 バブル経済が崩壊する前にJリーグが企画され、Jリーグへ動き始めた後にバブルが崩壊したことも幸運だった。バブル崩壊前だからこそ企業はJリーグに名乗りを上げ、バブル崩壊後だからこそ企業は物を売る理由を求めてJリーグ関連グッズに殺到し、そのことがまた大きな話題となったのだ。

 そのなかでも、話題の中心はやはりカズだった。契約金1億円突破に一般誌が騒ぎ、設楽りさ子との婚約問題には女性誌やワイドショーまでがつめかけ、貴りえ騒動の際にも貴花田(当時)の兄貴分としてたびたびマスコミに登場した。カズという名前は日々、ビッグネームになっていった。

【次ページ】 カズが夢見た「その先のシーン」。

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