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<ナンバーW杯傑作選/'93年4月掲載> カズの向こうに世界が見える。 ~Jリーグ開幕とW杯への夢~
text by
鈴木洋史Hiroshi Suzuki
photograph bySatoru Watanabe
posted2010/05/07 10:30
カズが夢見た「その先のシーン」。
プロ化は全てをもたらした。選手の意識が変わり、プレーのレベルがアップし、世界が近くなり、日本代表であることの誇りが復活し、そしてサッカーの存在を大きくした。その全ての過程で刺激剤となってきたのが、選手としての成長期がちょうどプロ化の時期に重なった幸運児――カズなのだ。
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日本代表はキリンカップ'93の最終戦に勝ち、上昇ムードでこの4月8日からのワールドカップ予選を迎えることになった。
世界のレベルを知る専門家ほど、予選突破は楽ではない、と語っている。3月14日時点でオフト監督は「80%の仕上がり」と言ったが、日本代表は4月8日を100%の状態で迎えられるだろうか。
本大会の晴れ舞台にデビューして日本のサッカーを世界に披露することができれば、たとえ完敗したとしても、日本代表はもうひと回り大きくなって帰ってくるはずだ。
いや、カズは完敗など考えてはいまい。カズはすでに、日の丸をつけてゴールを決めるシーンを、そして、その先のシーン――世界のトップリーグであるイタリアのセリエAなどでプレーをする自分の姿を夢見ているのではないだろうか。
日本のサッカーがまだ低迷の最中にいた1982年、15歳のカズはブラジルへ飛んだ。世界という舞台を求めて。その時から、カズというプレーヤーは世界という匂いを身にまとっている。
カズの向こうに世界が見える――。