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モウリーニョの策にバルサが完敗。
世界最高の頭脳は何を考えたのか?
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byGetty Images
posted2010/04/21 11:45
試合後、グアルディオラは元気のない声でこう語っている。
「ボールを回すことができず、あまりにも簡単にボールを失いすぎた」
持ち味が出せなかったバルセロナと、プラン通り完璧な試合をしたインテル。
サンシーロでのCL準決勝第一戦、3-1という結果には、両チームの明暗がくっきりと表れていた。
バルセロナはイブラヒモビッチを1トップに置き、その下にメッシを配する4-2-3-1でスタート。この日もパスを細かく繋ぎながらポゼッションを保ち、いつものバルサのリズムを作ろうとした。
しかし、最初から何かがおかしかった。
普段なら中盤で3~4本、軽快に繋がるはずのパスが、この日ばかりは2本目で途絶えてしまう。ビルドアップを得意とするCBピケが、最終ラインから前方めがけて無闇にロングボールを蹴る。
パスが繋がらないバルサに苛立っていたグアルディオラ。
らしくないシーンは続いた。
我慢できなくなったグアルディオラは、前半15分を過ぎた頃にはライン際にかけより、大きなジェスチャーで何度も「繋げ!」と叫んでいた。
しかし、グアルディオラのそんな焦りにもかかわらず、先制したのはバルセロナとなった。
左サイドのマクスウェルのドリブルの対応をマイコンとルシオが誤り、左からのクロスをペドロが押し込む。貴重なアウェーゴールは、インテル守備陣の対応のまずさから生まれた。
しかし、である。
先制してからも、ズレ始めていた歯車は戻らなかった。
先制すればゆっくりと中盤でボールを回し、前に出てくる相手をいなしながら、相手守備にできるギャップを突くのが、このチームの常套策である。しかしそれができないバルサ。そしてリズムはやがてインテルへと傾いていく。
インテルはシンプルで素早い攻撃だけに集中した。
いずれも目立ったのは、インテルの持ち味でもある、シンプルで素早い攻撃だ。
前半28分、エトーの右クロスをミリートがエリア内中央で受け、3選手を引きつけ左サイドのスナイデルへパス。スナイデルはこれをフリーで決め同点とする。
後半に入ってからも展開は変わらず、後半早々にパンデフがライン裏へ出したパスをミリートが折り返しマイコンが決めて逆転すると、15分にはスナイデルのヘディングシュートをゴール前でミリートが押し込む。(これは明らかなオフサイドだったが)
攻撃に手数をかけない、実にイタリアらしく、そしてモウリーニョらしいチームだ。モウリーニョはチェルシー時代にも、同じスタイルでバルセロナを破っている。
攻撃の方法論は、バルセロナとまさに正反対。
ボールを奪うと、前線のミリート、エトー、パンデフらが、一目散にスペースへと駆け抜ける。
特にミリートは質の高いフリーランニングから2アシストを決め、さらに1得点するなど、この日の攻撃面での主役は間違いなくこの人だった。