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日ハム・大嶋匠と中日・高橋周平。
キャンプで光ったルーキー達を評す。 

text by

小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2012/02/22 10:30

日ハム・大嶋匠と中日・高橋周平。キャンプで光ったルーキー達を評す。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

練習試合、紅白戦と快打を放ち続けた日ハム・大嶋匠。ソフトボール出身ながら急速に野球に適応し、21日の第5クールからは1軍に合流する

体感スピード170キロで培われた下半身の使い方。

 ところがテレビのスポーツニュースを見て驚いた。打ち方がいいのである。

 ノーステップに近い下半身の動きにまず目がいった。右足(前足)の爪先を軽くひねり、踵をわずかに浮かして戻すだけの動きでトップを作り、グリップ位置は肩より少し下。これを肩まで上げてから浅い縦スイングで打ちに行くという形で、過剰なバットの引きや、腰のひねり・ねじりがまったくない。

 前で紹介したようにマウンドからホームまでの距離が14.02メートルと短く、大学ソフトボール部の投手が投げる球は体感スピード160~170キロと言われる。こういうボールに対して余計な動きをすれば絶対差し込まれる。ああ、こういうボールをこういう形で打つことによって、大学時代通算80本塁打を記録したのかと思った。

守備・走塁の課題は残るが、打撃技術は合格点。

 彼の打撃について、筆者のFacebookにもこう書いた。

「日本ハムの大嶋匠が評判です。ソフトボール出身でプロ野球の球に対応できるわけがないと思っていましたが、TVのスポーツニュースを見て考えを変えました。反動を一切抑え込んだコンパクトなフォームでありながら大きいフォローを取れるという理想的な形でセンターを越えるホームラン。これには驚きました。体感スピードが150キロとも170キロとも言われるソフトボール投手の球を打つには余計な動きを入れることができなかったんでしょう。ソフトボール投手打ちは、プロ野球の打撃練習に使えると思いました。大嶋が即戦力とは思いませんが、注目するだけの価値はありますね」

 このウォール(自分の近況や写真、リンク、動画を投稿し、発信する場所)に対し、「いいね」と反応してくれた人が81人。これはそれまでで一番多い数で、大嶋に野球ファンの注目が集まっていることを改めて思い知らされた。

 守備、走塁に即対応できるかというと、それはやはり別競技なので苦労すると思う。しかし、打つ技術は本物。この打ち方なら変化球にも十分対応できるはずである。

理屈を実戦で生かす、中日・高橋周平の野球偏差値の高さ。

 大嶋がパ・リーグ新人の人気ナンバーワン野手なら、セ・リーグは高橋周平(中日)が最大の注目株だ。2月18日のLG(韓国プロ野球)戦までの5試合で18打数6安打、打率.333という好成績。これには高木守道新監督も頬を緩ませ、「ずっと使いたい」とコメントしている。

 高橋のよさは大嶋のよさに似ている。共通するのは形のよさ。

 簡単に書いたが、バッティングのことを考える習慣がないと「いい打ち方」は身につかない。昨年夏、山梨大会の準々決勝で敗退してから金属バットを木製バットに替え、「考えないと打てないから(木製バットは)面白い」と言ってのけた。

 大事なところで負け続け、甲子園に縁がなかった高橋を見て、「持ってない奴」と批判する人もいたが、私はこの一言で高橋を見る目が変わった。

【次ページ】 「当ててから腰を回す」非凡な打撃術で飛距離を稼ぐ。

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