詳説日本野球研究BACK NUMBER
日ハム・大嶋匠と中日・高橋周平。
キャンプで光ったルーキー達を評す。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2012/02/22 10:30
練習試合、紅白戦と快打を放ち続けた日ハム・大嶋匠。ソフトボール出身ながら急速に野球に適応し、21日の第5クールからは1軍に合流する
「当ててから腰を回す」非凡な打撃術で飛距離を稼ぐ。
そして、AAAアジア野球選手権では甲子園大会未出場でありながら代表選手に選ばれ、何と全試合3番・遊撃手で出場し、通算20打数10安打13打点の成績でMVPを獲得している。結果がいいだけではない。何度も言うが、打つ形がいい。
高橋のインタビューを掲載した1冊の雑誌がある。『アマチュア野球31号』(日刊スポーツ出版社)で、「考えないと打てないから(木製バットは)面白い」という発言もここから引用した。ここで高橋は「スイングではどういったことをこころがけているのですか?」という質問に対して、次のように答えている。
「ボールを呼び込んで、ポイントを近くして打つようにしています。感覚としてはバットに当ててから腰を回すという意識でやっています」
プロ野球関係者がさまざまな媒体で「回転で打つ」「腰を回して打つ」と言ったり書いたりしていることもあり、過剰に腰を回して、バットがインパクトのとき斜めに入る高校球児が結構いる。高橋の「バットに当ててから腰を回す意識でやる」という発言は、なかなか意味深長なのである。
しかも言うだけではなく、「バットに当ててから腰を回す」バッティングを実践しているところが非凡である。AAAアジア野球選手権の決勝、韓国戦で放った2ランホームランがまさにそういう打ち方で、打ったボールは137キロのストレート。これを右中間上段まで運んだ。
1、2年後には「サード・高橋」で一軍定着か。
プロでは遊撃から三塁に回ることが予想されている。遊撃には井端弘和がいて、荒木雅博(昨年遊撃を守り、今年は二塁に再コンバート)、岩崎達郎、若手の堂上直倫、吉川大幾と後継候補が目白押しである。それに対して三塁を守るのは守備に難がある森野将彦。ゆくゆくは森野を一塁に回し、三塁には高橋周平を持ってくるというプランが首脳陣の中で進行していると聞く。
高校卒野手は3~5年で一軍に昇格してくれればいい、というのが監督、コーチの一般的認識だが、高橋には回り道せず、すぐ実戦の場に飛び込める下地が既に出来上がっている。一軍定着は1、2年先、というのが私の予想である。