フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
女子の熾烈な戦いで勝利を得た14歳、
女王の中の女王、トゥクタミシェワ。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byABACA/AFLO
posted2011/11/22 06:01
シニアでも実力派のカロリナ・コストナー、アリッサ・シズニーを破って、GP2勝目を挙げてしまったエリザベータ・トゥクタミシェワ。まだ14歳にもかかわらずメンタルの強さは折り紙つき。「いい滑りができました。第2戦より自信もありました」とコメントを残した
11月20日までフランス・パリで開催されていたGPシリーズ第5戦目エリック・ボンパール杯。この大会では、女子が興味深い展開を見せた。
スケートアメリカチャンピオンのアリッサ・シズニー、スケートカナダチャンピオンのエリザベータ・トゥクタミシェワ、中国杯チャンピオンのカロリナ・コストナーと、今季のGPシリーズ3戦のチャンピオンが、ここでいきなり激突したのである。
ファイナルよりも一足先に行われた熾烈な争いで勝利を収めたのは、なんと14歳のトゥクタミシェワであった。
ベテラン二人も、決して気の抜けた演技をしたわけではない。
だがSP、フリーを通して3ルッツ+3トウループをがっちり成功させ、ほとんどミスなく滑りきったトゥクタミシェワが、総合3ポイントあまりの差をつけて二度目のGPタイトルを手に入れた。
「今季はジャッジの評価を上げるためのシーズン」
「あなたは欧州チャンピオン、全米チャンピオンにこうして勝ったのに、(年齢制限のルールのため)世界選手権に出られないなんて、フェアなことだと思いますか?」
会見でこう聞かれた彼女は、こう答えた。
「特に残念だとは思っていません。今季はジャッジの評価を上げるためのシーズンと思っていますから。こうしておけば来年、シニアのすべての試合に出ることになったときに、もうジュニア扱いされることはないでしょう」
欧州チャンピオンと昨年度のGPファイナルチャンピオンを両側に従えて、14歳の少女はこう答えた。声のトーンこそ幼いものの、顔の表情も、目力も、答える内容も、大人の記者たちがタジタジするほど堂々としている。
圧巻のジャンプで舞った14歳だが弱点も露呈した。
もっとも今回は、演技にそれなりの幼さも見えた。カナダの時はジャンプのうまさに圧倒されてあまり気にならなかったが、スケーティングがまだ伸びず、体の小ささに比例したようにリンクの使い方が小さい。
ことさらシズニー、コストナーと続けて見た後にトゥクタミシェワの演技を見ると、目に見えない一回り小型のリンクの中で滑っているかのようである。そして後半のジャンプをすべてリンクの左半分で跳んでいる。そのことについて会見で記者につっこまれると、初めて戸惑った表情を見せて「振付の構成がそうなっているので……」と答えた。
彼女がこの弱点を修正してくるほうが早いか、ジャッジの5コンポーネンツ評価が辛くなるほうが早いか、興味深く見守りたい。