スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
17連敗とマリナーズの未来。
~チーム低迷とイチローの選手生命~
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byYukihito Taguchi
posted2011/07/29 11:45
ウエッジ新監督(左から2番目)の下、前半戦は大健闘していたのだが……
マリナーズ改革の柱とされたフィギンスの大ブレーキ。
打てないのはイチローひとりではなかった。
たとえば二番打者に予定されていたショーン・フィギンスの大ブレーキ。
1割8分の打率も眼を覆いたくなるが、2割3分3厘という出塁率が低すぎる。四球を選ぶ能力の高い選手('09年には101個)がこの数字というのは、根本的に問題があるのではないか。
そもそもフィギンスは、2010年にマリナーズが打ち出した「新機軸」の要になるはずの選手だった。守備力と機動力を高め、投手力で勝負する戦略。ピッチャーズ・パークとして知られるセーフコ・フィールドの特徴を生かす意味でも、足が速くて守備の巧いフィギンスはイチローと並んで重要な位置を占めると期待されていた。
フィギンス自身、「イチローがバットマンなら、ぼくはロビンさ」と前向きのジョークを飛ばしていたくらいだった。
イチローの選手生命を延ばすには、チームの好調さが必須条件。
が、このプランは画餅に終わった。
正直な話、球団首脳陣も新戦力がここまで打てない(しかも2年つづけて地盤沈下だ)とは思っていなかったのではないか。今季の打線を見ても、スモーク、カスト、グティエレスといった主軸級がそろって2割前後の低打率にあえいでいる。その象徴がフィギンスというわけで、これはもう、チーム全体をオーバーホールするしか解決策は残されていないのだろうか。
ただし、若手の台頭を待つにはどうしても時間がかかる。
イチローというチームの至宝をどう処遇するかも、大きな問題になってくるだろう。
イチロー個人の選手生命を延ばすという観点からしても、チームの低迷はけっして歓迎すべき事態ではない。さあ、困った、マリナーズ。この連敗が示唆する未来は、思った以上に困難なものかもしれない。