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移籍? 残留!? メジャーで大注目!
強豪球団が欲しがる黒田博樹の実力。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byGetty Images
posted2011/07/26 10:30
メジャーで野茂英雄以来ともいえる激しい争奪戦が繰り広げられている黒田博樹。破産したドジャースにあって1年契約1200万ドル(約9億7千万円)とチーム最高年俸となっていることが、移籍の可能性を高くしている
「メジャーリーグに慣れるまで、丸3年かかりました」
今年のスプリング・トレーニングでの、ドジャース、黒田博樹の言葉である。
中4日のローテーション。6回3失点、110球を目安に降板するメジャー流のマネジメントなど、適応しなければいけないものがたくさんあった。黒田の方針として、なんでも試してみよう、そう考えていたという。「郷に入っては郷に従え」。柔軟に対応したつもりでも、アメリカの水に慣れるまで3年の年月が必要だった。
「自分にはメジャーで1球も投げていないのに、高額の年俸をもらうことにプレッシャーがありました。自分の実力を認めてもらわなければ……と思ってましたから。3年目契約が終了して、ドジャースから再契約のオファーがあった時はうれしかったですね。自分の実力が評価されたということなので」
黒田の人柄がうかがえる考え方である。
黒星先行も信頼度抜群の黒田に集まる他球団の熱視線。
その黒田が、いまメジャーでもっとも注目される投手となっている。
昨年のオフ、黒田はドジャースからの複数年契約を断り、1年契約を結んだ。そのドジャース、今季はオーナーが破産申請を行うなど、なにかとトラブルが多く、優勝争いからも脱落してしまった。
ドジャースの不振によって、黒田のシーズン中移籍の可能性がグッと高まったのである。優勝争いをし、先発に不安を抱えるチームならば、黒田獲得を検討するのは当然だろう。
前半戦終了時点での黒田の成績は6勝10敗、防御率は3.06。負けが先行しているものの、6回3自責点が目安の「クオリティ・スタート」は18回中11回と、信頼するに足る先発投手であることを証明している。
黒星が多いのは、打線の援護が少ないことも理由のひとつ。特に6月は1勝4敗の成績に終わったが、黒田先発試合のドジャースの得点は1点、0点、4点、1点、1点だった。5試合でたったの7点、1試合あたり1.4という極めてお粗末な数字では、負けがついてしまっても仕方がない。