リーガ・エスパニョーラの愉楽BACK NUMBER
バルセロナが世界一を達成した陰で、
グアルディオラの流した涙の意味。
text by
中嶋亨Toru Nakajima
photograph byEtsuo Hara
posted2009/12/29 10:30
監督就任2年目にして、バルセロナをサッカーのクラブチーム史上初となる6冠に導いたジョゼップ・グアルディオラ。クラブワールドカップ大会前には、'09年を振り返り「これ以上の明るい未来はない。なぜなら、この1年で達成した記録を上回るのは不可能だからだ。」とコメント
クラブワールドカップ決勝戦、延長戦の末に南米王者エストゥディアンテスを2対1と振り切ったバルセロナはクラブ史上初の世界一の座を手に入れた。
'08-'09シーズンの3冠に加え、欧州スーパー杯、スペインスーパー杯、そしてこのクラブワールドカップと全てのタイトルを獲得したこのチームは、バルセロナのクラブ史だけではなく、世界のサッカー史にその名を刻んだ。
6冠達成が決まり、バルセロナの選手、スタッフがピッチ上で喜びを分かち合い、その輪も解けて表彰式の準備を待っている時だった。
スペインのテレビ中継には、一人で腕組をしながら立つバルセロナ監督グアルディオラの姿が映し出された。グアルディオラは既に感慨深そうな表情を浮かべていたが、不意に顔を掌で覆い、肩を震わせ始めた。
グアルディオラは泣いていた。
傍にいた選手やスタッフがそれに気がつき、彼の肩を順番に抱いた。グアルディオラはそれに応えるように掌をどけたが、溢れる涙は止まらず、再び掌で顔を覆った。とても印象深い光景だった。
現役時代に欧州CL、リーガ、国王杯などの栄光に輝いたペップ。
グアルディオラが選手時代からバルセロナにおいて象徴的な存在だったことは有名だ。
10代にしてクライフに戦術眼と技術の高さを見出され、最終ラインと中盤、攻撃陣をつなぐ「4番」のポジションを任されたグアルディオラは、シャビやシャビ・アロンソ、セスクといった現代のスペインサッカーを代表するゲームメーカーの先駆けとなった。グアルディオラはチャンピオンズリーグ、リーガ、国王杯と選手時代にも多くのタイトルを獲得している。だが、1992年にクラブワールドカップの前身であるトヨタ杯に欧州王者として出場した際には2対1と敗戦。グアルディオラにとってはバルセロナ時代に唯一獲得できなかったタイトルが世界一の称号だったのだ。
結局、グアルディオラは、世界一はおろか、欧州王者にも返り咲くことなく2001年にバルセロナを去り、イタリア、カタール、メキシコと渡り歩いた後に2006年に現役を引退した。
奇しくもその2006年、バルセロナはロナウジーニョを軸に欧州王者に上りつめクラブワールドカップに出場した。
だが、日本(当時の開催地)はバルセロナにとっては“鬼門”のままだった。グアルディオラが中盤に君臨した“ドリームチーム”以来の黄金期の只中にあったバルセロナは、ブラジルのインテルナシオナルに1対0と敗れ、またも世界一を逃したのだった。