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心身共に準備万端のマンUが、
史上初のCL連覇に挑む! 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2009/05/27 11:00

心身共に準備万端のマンUが、史上初のCL連覇に挑む!<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

 メディアが『ドリーム・ファイナル』と盛り上げるローマでのCL決勝に、世間が世紀の撃ち合いを期待するのも無理はない。当事者であるマンチェスターUのファーガソン監督でさえ、バルセロナとの決戦に向けた先週の記者会見で、「互いに得点を奪っての接戦になるだろう」と語っているのだから。

 だが一方で、英国内のブックメイカーは揃ってロースコアを予想している。代表格のウィリアムヒルは、スコアレスドロー(0-0)に最低倍率(即ち最も現実的)を付けているほどだ(5月25日現在)。それほど、準決勝でチェルシーが発信した「バルサは封じられる」というメッセージは強烈だった。上述のファーガソン発言は、大ベテラン監督らしい、リップサービスを兼ねた心理作戦。実際のマンUは、攻撃一辺倒の相手には付き合わず、賢く戦うと思われる。

高い守備力とC・ロナウドの1トップによる必勝態勢。

 カウンター狙いは、敵にはないマンUの強みに適している。その1つは高い守備力。リーグ戦38試合での失点数はマンUもチェルシーも「24」。3連覇を達成したプレミア王者の守りは、180分間バルサを零封した「幻のファイナリスト」と同じハイレベルにある。もう1つは、手数をかけずに決定機を生み出せる攻撃スタイル。律儀にショートパスをつなぐバルサとは違い、マンUには自陣内からのドリブルやロングボールといった自由がある。C・ロナウドなどは、40m超の距離からゴールを狙うことすら許されている。

 決勝には、そのC・ロナウドを最前線に置く4-2-3-1で臨むだろう。スピード、パワー、テクニック、ゴールへの貪欲さを併せ持つウィンガーは、いざとなれば最高の1トップとして機能する。当人も、再浮上したレアル移籍の噂を「自分の居場所はマンU」と否定しつつ、スカイTV(衛星局)のマイクに向かって「チームが望むならそれが俺のポジション」と、1トップでの全力投球に意気込みを見せた。

 対メッシの第1防波堤はパク・チソン。マンチェスターの地元紙に、「(メンバーから漏れた)昨年の決勝で過去最大の失望を味わった」と吐露した韓国代表MFには、普段から超人並みのエネルギーに昨年の悔しさという起爆剤が加わり、MVP級の活躍も期待できる。背後の左SB、エブラとのタンデムでメッシを抑えた実績(昨年の準決勝)も心強い。逆サイドでは、前ラウンドでウォルコットを完封したルーニーがアンリ封じに汗を流す。トップ下は、経験値の高さが安定感をもたらすギグスか? フルタイム出場は無理でも、交替要員としてベルバトフとテベスが控えるベンチは相手へのプレッシャーとなる。

MFキャリックは「辛抱強く守って反撃の機会を逃さない」と発言。

 ダブルボランチのキャリックとアンデルソンの役割は、最終ラインとの間を開けずに中央からの進入とラストパスを未然に防ぐこと。そうすれば、孤立した相手センターFWのエトーの存在は、ファーディナンド(怪我からの復帰が濃厚)とビディッチのCBコンビが消してくれる。カウンターの起点となるべきキャリックは、『マンUのローマ皇帝』と見出しを付けられた『サンデータイムズ』紙のインタビューで、「辛抱強く守って反撃の機会を逃さなければ絶対に勝てる」と自信を覗かせている。

 「フレッシュな状態でローマに乗り込みたい」と指揮官が言っていた集団は、直前のプレミア最終節で、先発レギュラー陣を1人も使わずに勝利を飾った。心身共に準備万端のマンU。思い通りの試合運びが実現すれは、「攻撃サッカーの競演」という大衆の願いは叶わなくとも、CL史上(92年以降)初のタイトル防衛というファーガソン一行の夢は叶う。

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