リーガ・エスパニョーラの愉楽BACK NUMBER
いまリーガで最も旬な男。
カナーレスはスペインの至宝となるか。
text by
中嶋亨Toru Nakajima
photograph byMutsu Kawamori
posted2010/01/28 10:30
スペインのみならず、海外のビッククラブも注目しているというセルヒオ・カナーレス。今月14日の記者会見では「現在、僕は自分の状況について何も否定していない。でも、ここで満足しているのも事実だ」とコメントした
現在、リーガで最も旬な選手といえば、間違いなくラシン・サンタンデールのセルヒオ・カナーレスだろう。2月16日に19歳になるこの若者は、連日のようにMARCAやASといった主要スポーツ紙の表紙を飾っている。なぜなら、レアル・マドリーが彼の獲得に乗り出し、早くもその交渉を成立させようとしているからだ。
すでにカナーレスの代理人を務める彼の父親とレアルの間では移籍合意で話はまとまっており、ラシンとレアル両クラブ間でも1000万ユーロの移籍金+1~2年間はラシンにレンタル扱いで残るという方向で交渉成立が近づいている。アーセナル、バイエルン・ミュンヘン、チェルシー、マンチェスター・シティも獲得に動いたものの、カナーレス本人の気持ちはレアルで固まっているという。
レアルを震え上がらせた“幻のゴール”で一躍時の人に。
今では時の人となりつつあるカナーレスに注目が集まったのは、第11節のレアル・マドリー対ラシン戦だった。
後半15分から途中出場したカナーレスはトップ下の位置からレアル最終ライン裏を陥れる動きを繰り返すと、後半31分にペナルティエリア内への縦パスに反応。ラシンMFルイス・ガルシアがヒールキックで放ったパスに逆を衝かれたレアル最終ラインからわずかに自由になると、正確なトラップから振り向きざまのシュートでレアルGKカシージャスを破ってゴール右隅にシュートを突き刺した。
ルイス・ガルシアからのパスを引き出す絶妙のタイミングでの飛び出し。
また、少しでもコントロールをミスすればレアル最終ラインにブロックされてしまうような後方からのボールを、トラップするやシュートへと持ち込む流れるような一連の動きはまさに圧巻。カシージャスに全くチャンスを与えないコースへとシュートは放たれたのだが、このゴールはオフサイドの判定によって取り消されてしまった。
最終的にレアルが1対0で逃げ切ったが、その見事なシュートで結果を変えていたかもしれない18歳の選手に、周囲は色めき立った。
もしかするととんでもない才能を持つ選手がラシンに登場したのではないか?
試合後に記者陣の間で最も話題に上がったのは、サンチャゴ・ベルナベウのピッチで初めてプレーした左利きの若者の名前だった。