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オランダ代表監督・ファンマルバイク 「我々にとって日本はやりやすい相手だ」 ~南アW杯対戦国研究~
text by
若水大樹Daiki Wakamizu
photograph byYuichi Masuda
posted2010/01/29 10:30
'08年7月よりオランダ代表を率いるファンマルバイク監督
オレンジ軍団の面々が、口をそろえて指摘した日本の弱点とは――言いたい放題の発言を完全収録。
「日本とは9月に対戦したが見た目ほど簡単な試合ではなかった。3-0で勝利したが内容にそれほど差はなかったと思う。日本は得点力に少し問題があるが、危険な相手だ。過小評価してはいけない」
W杯抽選後のファンマルバイク監督の言葉だ。油断してはいけないという意味では多少は本音の部分もあるかもしれないが、こういう場での模範的回答だろう。
実際は日本と同じグループに入り、ほくそ笑んでいるに違いない。日本と親善試合を組んだのもW杯前にオランダにとっては未知なアジアのサッカーを経験しておくためだった。それが幸運にも、わずか数カ月前に戦力を丸裸にし、既に分析が終わっている国と再戦することになったのだ。喜ばないわけがない。
実は日本との親善試合翌日、ファンマルバイク監督は突撃訪問にもかかわらず赤裸々に独自の日本代表分析結果を語ってくれていた。まさかW杯で対戦するとは思ってもいない時期だから遠慮など一切なく、ズバズバと日本の問題点を指摘された。
親善試合は「いい練習になったよ」と日本の実力を賞賛。
「あれはいい練習になったよ。日本は運動量が豊富で、積極的にプレッシャーをかけてきた。テクニカルな選手がそろっていて、パスワークもよく、組織力がしっかりしているチームだと思う。特に前半はオランダの内容も悪くて苦戦した」
ハーフタイム中の記者席では「こんなに面白いサッカーをするとは思わなかった。すごくいいチームじゃないか」と絶賛された。20年以上もオランダ代表の番記者を務めているドリッセン氏は「何だこれは? 新しいトータルフットボールか?」と驚いたほどだ。
監督が「苦戦した」と表現したように前半の日本は好印象を残していたが、後半は弱点をさらして完敗した。
――前半はオランダの内容が悪かったと言っていたが、具体的に何が悪かった?
「我々は初めからジオ(ファンブロンクホルスト)を使うべきだった。中村(俊輔)はすぐ中央に入っていくし、あの14番(中村憲剛)も中央に寄ってプレーしていた。中村が空けたポジションでジオを使っていれば、中村はジオを追いかけることもしなさそうだったし、もっと中盤も楽になっていただろう」
――前・後半で全く違った試合になったが?
「日本の運動量が落ちたということもあるが、ジオが起点となって機能していた。だからエリアの攻撃力も最大限に生かされた。日本はあれだけ前半から走っていたから、後半はこちらに広大なスペースができていたし、サイドバックも全く走れなくなっていて、裏を突きやすかった。あと15分、試合が長かったら5-0ぐらいになっていたかな。少なくとも、もう2、3点は決められていたと思う」
――デゼーウの役割も重要だったのでは?
「そうだ。彼が中盤の底でボールを簡単にはたくようになってから日本は追い切れなくなっていた。それにもし、マルク(ファンボメル)が出場していれば日本の中盤の選手を数人なぎ倒していて組立てがもっと容易になっていただろう。全く違った試合展開になっていたかもしれない」