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長島茂雄大いに語る。 <再録連載第1回> 

text by

瀧 安治

瀧 安治Yasuji Taki

PROFILE

photograph byKiyoshi Nishikawa

posted2009/05/21 11:01

長島茂雄大いに語る。 <再録連載第1回><Number Web> photograph by Kiyoshi Nishikawa
 1980年、6年目を迎えた長嶋巨人は前半戦を終わって28勝34敗8引き分けと低迷していた。前年の成績はリーグ5位。虚人軍、巨貧打線、虚投崩壊……批判の声が飛び交うなか、創刊まもないスポーツ総合雑誌『Sports Graphic Number』は大特集「長島茂雄へラブコールを!」を世に問うた。その前文で現役時代の颯爽たるプレーを描写したあと、このように書いている。

「長島茂雄とはかつてそのようなプレーヤーだったのである。その長島が低迷している。勝てないであえいでいる。こんな時こそ、こんな時だからこそ、かつてのヒーローに我々は熱いエールを贈りとどけたいと思うのである」

(記事内の表記は当時に従い、長嶋ではなく長島のまま掲載しています)

再録連載 第1回(1/2)

一軍の半分は、多摩川の二軍選手。

――監督、前半戦は不本意な成績でしたけど、後半に備えて特別な対策法を作るとか、練習法を変えるとか、何か考えてますか。

長島 オールスター後については、もう当然練習スケジュールを作ってるけどね。もちろん、特別にハードなやつね。例によって3時から、だいたい7時ごろまで、もう相当ヘトヘトになるまでやります。三~四時間みっちりとね。すでに十日間ずつにわたる長期スケジュールが出来あがってるんだよ。

――コーチにアンダーシャツ五枚ぐらい持ってこさせるくらいハードなやつじゃないとダメですよ、今のジャイアンツを建て直すには。

長島 うん、たっぷりとした内容で組んだよ。

――内容のある練習でイキのいい選手がドカーンと出てくればいいですね。

長島 いまは急にはいないだろう。夢物語をやったってしょうがないんだから。なにしろ多摩川にいた奴で、多少ましなのは全部上に上がってきてるんだもの。今の一軍は半分が多摩川の二軍の選手なんだから。

――戦力的にはどうなんですか。前半戦を通じてベストで揃ったときはなかったでしょう。

長島 ないですよ。

言いたい放題をぶちまけてみろ。

――どうして現在のようになったんですかねえ。一体どうして揃わないんだろう。みんなめいめいバラバラなんですかねえ。

写真

長島 戦力的に揃ってないかもしれないがねえ、でもバラバラということはないと思うなあ。われわれはしょっちゅう選手に目を光らせてるんだよ。仕事だからな。どの選手はどういう心理状態、この選手はどうだ。高田はいまどういう状態か、柴田は使われないときはどうだとか。あるいは若手はどうだとかいうようなことは、しょっちゅう物事の徴候を変な方向になっちゃいかんと思って、みんな見てますよ。

 ただ、そのぐらいのことはな……。一人だけどうのこうのと、コーチの言葉に文句を言うくらい力がある選手がいればいいけど、今じゃそういう力のある選手がいないのよ。

――文句も出ない……。

長島 文句も出ない。オールスター戦の前、広島遠征の時、どういうふうにすれば強くなれるかについて、ミーティングをやらせたんだ。コーヒーやお茶を飲みながら、例によっていろんなメンバーで、例えばベテランはベテラン四~五人で、中堅は中堅同士、若手は若手同士というふうにして、監督、コーチ抜きで強くなるために、われわれ幹部に何を望むか、何を期待しているか、いろんな言いたい放題をぶちまけてみろということで、二度か三度か、やったんです。それでもあんまり活発な意見は……。われわれの時には、ああだこうだって、これはみんな力あったからね。コーチはオレのことでガタガタ言い過ぎだ、われわれは黙っててもちゃんとやるからとか文句を言ったよね。そういう元気も力も、もうないの、いまは……。

【次ページ】 まだ普通の人間、プロ選手じゃない。

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