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長島茂雄大いに語る。 <再録連載第1回>
text by
瀧 安治Yasuji Taki
photograph byKiyoshi Nishikawa
posted2009/05/21 11:01
「長島茂雄とはかつてそのようなプレーヤーだったのである。その長島が低迷している。勝てないであえいでいる。こんな時こそ、こんな時だからこそ、かつてのヒーローに我々は熱いエールを贈りとどけたいと思うのである」
(記事内の表記は当時に従い、長嶋ではなく長島のまま掲載しています)
再録連載 第1回(1/2)
一軍の半分は、多摩川の二軍選手。
――監督、前半戦は不本意な成績でしたけど、後半に備えて特別な対策法を作るとか、練習法を変えるとか、何か考えてますか。
長島 オールスター後については、もう当然練習スケジュールを作ってるけどね。もちろん、特別にハードなやつね。例によって3時から、だいたい7時ごろまで、もう相当ヘトヘトになるまでやります。三~四時間みっちりとね。すでに十日間ずつにわたる長期スケジュールが出来あがってるんだよ。
――コーチにアンダーシャツ五枚ぐらい持ってこさせるくらいハードなやつじゃないとダメですよ、今のジャイアンツを建て直すには。
長島 うん、たっぷりとした内容で組んだよ。
――内容のある練習でイキのいい選手がドカーンと出てくればいいですね。
長島 いまは急にはいないだろう。夢物語をやったってしょうがないんだから。なにしろ多摩川にいた奴で、多少ましなのは全部上に上がってきてるんだもの。今の一軍は半分が多摩川の二軍の選手なんだから。
――戦力的にはどうなんですか。前半戦を通じてベストで揃ったときはなかったでしょう。
長島 ないですよ。
言いたい放題をぶちまけてみろ。
――どうして現在のようになったんですかねえ。一体どうして揃わないんだろう。みんなめいめいバラバラなんですかねえ。
長島 戦力的に揃ってないかもしれないがねえ、でもバラバラということはないと思うなあ。われわれはしょっちゅう選手に目を光らせてるんだよ。仕事だからな。どの選手はどういう心理状態、この選手はどうだ。高田はいまどういう状態か、柴田は使われないときはどうだとか。あるいは若手はどうだとかいうようなことは、しょっちゅう物事の徴候を変な方向になっちゃいかんと思って、みんな見てますよ。
ただ、そのぐらいのことはな……。一人だけどうのこうのと、コーチの言葉に文句を言うくらい力がある選手がいればいいけど、今じゃそういう力のある選手がいないのよ。
――文句も出ない……。
長島 文句も出ない。オールスター戦の前、広島遠征の時、どういうふうにすれば強くなれるかについて、ミーティングをやらせたんだ。コーヒーやお茶を飲みながら、例によっていろんなメンバーで、例えばベテランはベテラン四~五人で、中堅は中堅同士、若手は若手同士というふうにして、監督、コーチ抜きで強くなるために、われわれ幹部に何を望むか、何を期待しているか、いろんな言いたい放題をぶちまけてみろということで、二度か三度か、やったんです。それでもあんまり活発な意見は……。われわれの時には、ああだこうだって、これはみんな力あったからね。コーチはオレのことでガタガタ言い過ぎだ、われわれは黙っててもちゃんとやるからとか文句を言ったよね。そういう元気も力も、もうないの、いまは……。