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長島茂雄大いに語る。 <再録連載第1回>
text by
瀧 安治Yasuji Taki
photograph byKiyoshi Nishikawa
posted2009/05/21 11:01
再録連載 第1回(2/2)
まだ普通の人間、プロ選手じゃない。
――困ったものですね。
長島 だって、経験と実績がないから。もう一軍でレギュラーやってることにおどおどしちゃってる感じよ。王とか柴田、高田、堀内ぐらいよ、一人前なのは。強烈な意見なんてまずないな。とにかくコーチの言葉に忠実に一所懸命やらにゃいかんと、ただそれだけ。じゃあ、一人一人がどういうふうにしていけばいいかというような考えのある選手はまず出てこない。
――言われたことをやってるだけですか。
長島 結局、工夫してないっていうことだろうね、選手一人一人が。でも、分かんないのよ、どういうふうにやっていいか。だから、巨人のV9のことを知ってる人は、V9時代の感覚で色々と言ってくれますよ。でも、いまの連中の尺度とV9の選手の尺度をそのまま比べちゃダメですよ。
――話にならないですかね。
長島 そうですよ。だから、上から一つ一つ克明にこうやって、今度はこうなるというふうに、丹念に、根気よく教えていく、それしかないの。練習法とか練習スケジュールとか、細かいことに関して、キミら自身の何がやりたい、何を長時間やって欲しいとか、いろんな要望、要請があるだろう。それを言ってみろって言うんだが、まず特別にああしたい、こうしたいっていう選手はないんだ。
だから、そういうところから、丹念に、根気よくやっていくことが必要なんですよ。
――選手に自覚がないんですかね。
長島 だからオレから言わすと、プロ選手じゃないっていうの。まだ普通の人間だっていうの。
――じゃ、うちでバットを振るとか、根本的な心構えもないのかな。
長島 バットは振ってんだろ。素振りは強制だから。ただ、そんなことはないだろうけど、なんとなく振ってるっていうのかな……。オレなんかだったら、バットが振れないと気持ち悪くてしょうがなかった。そして、バット振ってもいい汗かかないと気持ち悪いだろう。だから、もっと振れ、もっと振れってやるでしょう。いまの若手は、そういう観念がないんだから。