スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
家長所属のマジョルカが降格危機。
最終節に待つのは天国か地獄か?
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byAFLO
posted2011/05/18 10:30
崖っぷちのチームを1年間率いてきたラウドルップ監督(右)とフェレール副会長。1997-1998シーズン以来13年間守り続けてきた1部リーグ所属は、どうなる?
次々と起こる不測の事態にチームは揺れ動く。
家長昭博の獲得とゴンサロ・カストロの売却失敗によって生じたEU外国籍枠の問題。ビクトル・カサデススの負傷離脱とカベナギの突然の退団、そして移籍期限ぎりぎりで破談したアンソニー・ウジャーの獲得失敗がもたらしたストライカー不足。
次々と起こる不測の事態にフロントが翻弄される中、チームは0得点8失点という散々な内容で今季2度目の3連敗を喫してしまう。
事態が二転三転した末にラティーニョの退団と家長の残留で落ち着いた2月1日。ラウドルップは会見で「この経験をより良い未来への教訓にしなければならない。まだ2月だが、今から未来に何ができるのかを考えるべきだ。金がないのであれば、もっと走らなければならない」と静かに語った。
あの時の疲れきった表情は、彼が抱えてきたストレスの大きさを象徴していた。
「残留争いが絡んできてからは攻守共に本当にばらばら」
その後もなかなか勝てない時期が続いたが、前半戦の貯金のおかげで常に順位は中位を保った。
だが、それが逆に危機感の欠如につながったのかもしれない。
対岸の火事だと思っていた降格の恐怖は気づかぬうちに背後から忍び寄っていた。そして徐々にプレッシャーを感じはじめた選手達は、試合を重ねるごとに自分達のプレーを見失っていくことになる。
37節アルメリア戦を1-3で落とした結果、最終節を前に降格圏との勝点差は2ポイントまで縮まった。この試合後、家長は見るからに困惑した表情でチームの現状を次のように語っている。
「残留争いが絡んできてからは攻守共に本当にばらばら。みんな一生懸命やっていると思うし、気持ちがないわけじゃないけど、それがチームとしてうまく表現できないっていうか……ちょっと分かんないっすね」
外国人枠の問題が解決されてからの4カ月間、家長は先発と途中出場を繰り返しながらもほぼ毎試合ラウドルップに出場機会を与えられ、ヘディングで2ゴールを挙げるなど結果も出してきた。