プロ野球亭日乗BACK NUMBER
選手の運命を変える頭部死球――。
高橋信二は巨人で復活できるか?
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/05/17 10:30
5月10日、巨人入団会見に臨んだ高橋は満面の笑顔。翌11日の横浜戦に代打で登場したが、巨人での初打席は遊ゴロに終わった
MLBは故障者リストに“脳しんとう枠”を新設。
こうしたPCSの発症事例を重く見たMLBは、これまで60日間と15日間だった故障者リストに、脳しんとうの経過観察をすることを目的とした7日間という枠を新設した。
脳しんとうを甘くみてはいけない。選手のケアをしっかりしないと、選手生命をおびやかす問題に発展する――これがMLBの認識というわけだ。
高橋の内耳しんとうも、平衡感覚などをつかさどる三半規管への影響などを含めて、後遺症が心配されるケースである。
「頭にデッドボールを食らうと、その残像が残って踏み込めなくなり、バッティングがおかしくなる」
球界でよく語られてきた頭部死球の“後遺症”である。
筆者が井上さんに「あのデッドボールが……」と言ったとき、筆者はもちろん、井上さんも、この球界の言い伝えを念頭に話をしていたわけだ。
もちろんそういうメンタルな部分がないとは言えない。ただ、メジャーでの症例がはっきりとしてきたことで、脳しんとうへの考えは大きく変わっている。頭部死球や頭への衝撃を受けた選手には、当初の症状は軽度でも、医学的には根が深い問題が残る可能性があるわけだ。
体調さえ万全ならば巨人の頼もしい新戦力となるはずだが……。
高橋は日本ハム時代から、ひざに持病があって、捕手としての出場が難しくなってきていた。
そのため一昨年は一塁手か指名打者での出場がほとんどだった。今季は開幕から二軍暮らしが続き、その間にホフパワーが活躍、一塁は稲葉篤紀外野手との併用となったために、ポジションを奪われて宙に浮いた状態だった。
そこで編成上手の日本ハムが、金銭トレードを決断したわけだ。
だから、体さえ万全ならば、打撃不振、特に右打者不足で苦しむ巨人にとっては、大きな力となる選手のはずである。