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<ノルディック複合、復権へ> 小林範仁 「笑顔の新エース」 ~特集:バンクーバーに挑む~
text by
折山淑美Toshimi Oriyama
photograph byKoomi Kim
posted2009/12/12 08:00
“お祭り男”が調子づけば、複合団体のメダルも射程圏内だ。
「バンクーバーでは団体はもちろんだけど、その前にみんなが個人戦に照準を合わせていかなければいけないですね。個人の力があっての団体ですから。僕にチャンスがあるのはノーマルヒルの個人戦だと思うんです。世界選手権では着地でテレマークを入れられなくて、3位になったデモン(アメリカ)に8秒遅れで距離をスタートして5位だったけど、彼より前のスタートなら結果は違ったと思う。だから、絶対にジャンプで走りが強い選手の前につけなくてはいけない。そうなれば面白くなると思いますよ」
自分が五輪のメダル獲得を目標にして突き進めば、他の選手も同じように付いてきてチーム力も上がる。そしてそれが団体のメダルにつながるはずだと信じている。
「僕の場合、まわりが『範さんいける!』って調子に乗らせてくれたほうがいいんです。『大丈夫だ、期待してるぞ』と言ってくれれば、自分でも『そうだよな、俺いけるよな!』みたいな感じになりますから。そういう“お祭り男”的な部分を前面に出してやっていきたいですね」
1回目の五輪は参加しただけで、2回目のトリノは楽しんだ。だが3回目のバンクーバーは勝負するための五輪だと言う。戦えるだけの力はついたから、と。
小林はそう言うと、朗らかな笑い声を周囲に響かせた。
小林範仁(こばやしのりひと)
1982年5月4日秋田県生まれ。花輪高校から日本大学を経て、'05年に東京美装興業へ。'01年ノルディックスキー世界ジュニア選手権優勝。'03年ユニバーシアードでは個人、スプリント、団体の3冠を達成。'02年ソルトレークシティ、'06年トリノで五輪日本代表に選ばれる。173cm、65kg