プロデビューから1年3カ月という日本人最速記録で世界王座にたどり着きました。飯田さんが挙げた京口さんのベストバウトは勝った試合ではなく、あの名勝負でした。《後編はこちら》
「恩師の辰吉丈一郎さんは負けた試合でも絵になる。本人からしたら"負けたんだから"になるかもしれないですけど、薬師寺保栄さんとの試合も主人公に見えました。自分も負けましたが、面白い試合だったと思うし、盛り返したシーンはベストラウンドだったかなと思います」
ボクシング解説者でもある飯田覚士さんが、昨年現役を引退した元2階級制覇王者の京口紘人さんのベストバウトに2022年11月、寺地拳四朗選手とのWBA、WBC世界ライトフライ級2団体王座統一戦を挙げると、「嬉しいです」と頷いて呼応しました。
会場が沸いた5ラウンド。
京口さんがプロ17戦目に喫した初黒星であり、WBA王座から陥落したとはいえ勝者に引けを取らないほどの輝きでした。
迎えた5ラウンド。強烈な右ストレートを浴びてダウンを奪われたものの、立ち上がってからはラッシュを畳みかけられても被弾をしません。打ち疲れを待ってから得意のコンビネーションで押し返して、立場を逆転させたのです。

「ダウンの後、レフェリーは京口くんがちゃんとガードして、かつ、ムーブして相手を見ていることが分かっていたので(ラッシュがあっても)止めようとはしなかった。1分経ってもガードと、ムービング。そうやって逆に反撃のタイミングを図っているから、いつ打ち返すんだろうと思っていた」(飯田)
「拳四朗選手が打ち疲れて動きがガクンと落ちる瞬間を狙っていました。ただ自分に疲れとダメージもあったので、意識半分というか、夢心地というか、無我夢中ではありました」(京口)
ファイトスタイルは"攻防一体"。
京口さんはリングに張ったロープを頭でくぐるロープウィービングを日ごろから大事にしていました。体に染みついた技術だったからこそ、意識半分でありながら最大のピンチを最大のチャンスに転換することができたのです。
「その練習をずっとやっていました。常に頭を動かしてディフェンスをしていてもすぐにパンチを打てるという攻防一体。それはもう自分のファイトスタイルでもありましたから」
京口さんは盛り返したものの、7ラウンドにワンツーを食らってレフェリーが試合をストップします。
「結果的には完敗。それでも凄くいい試合だったというのは自分も胸を張って言えるのかなと思います」

以下、このようなトピックにも触れています。
- 辰吉丈一郎さんからの教え
- カメラマンも絶賛する美しいアッパーのこだわり
- プロデビューから1年3カ月で世界王者になれた理由
- 「しんどくて…」飯田が振り返る逃げ出した過去
- コンプレックスをマイナスに捉えない思考法
- 今だから話せる現役時代の秘話
プロ通算19勝12KO3敗。3階級制覇を狙って昨年3月、WBO世界フライ級王者アンソニー・オラスクアガ選手に挑戦しましたが、判定負けに終わったことで現役引退を決意します。
「全部出し切りましたし、全然後悔ない。本当にボクシングに感謝ですし、凄く真面目に真剣に嘘なくボクシング人生歩めたなって」
ボクシングをまっすぐに真摯に愛したからこそ、「絵になるボクサー」であり続けられたのではないでしょうか。(8月10日取材)

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