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【西武】「静寂に包まれながら…」ライオンズ・栗山巧、野球人生“最後の打席”とファンと交わした別れの儀式「『チャンステーマ4』にジッと耳を澄ました」《8.30ドキュメント/後編》
マウンド上には楽天の岸孝之が立ちはだかっていた。2007年から2016年まで10年間ともに頂点を目指した1歳下の盟友である。栗山巧は胸の高さからドロンと落ちてきたショートバウンドのカーブを空振りすると、ギュッと唇を結び直した。
「面白かったです。カーブ、凄かったし、(バットが)止まらなかったです。止められると思っていたんですけどね。あれが勝つピッチャーというか、日本を代表するストレートを投げるピッチャー。勉強になりましたね。最後の最後まで」
8月30日の引退試合。彼は思う存分、最後の真剣勝負を満喫していた。
1打席目は2回裏1死走者なしで回ってきた。割れんばかりの大歓声の中、バットを構える。グリップを指2本分ほど余したアベレージヒッターならではのスタイルはこの日も健在だ。

最初からファーストストライクを狙うと決めていたのだろうか。初球、140㎞直球をフルスイングでファウルにして、球場が沸いた。1ボール1ストライクから岸の代名詞でもある縦割れのカーブを空振りすると、また球場が盛り上がる。最後は外寄りの142㎞直球に快音を残したが、左中間への飛球はキャッチされた。
とはいえ、観客席のあちこちからこぼれ落ちた溜息には希望が入り混じっていた。調子は良さそうだ。まだ3打席ある――。
4回裏2死一、二塁、再び岸と対峙した。今度は初球の外角低め142㎞直球を逆らわずに打ち上げた。大歓声を乗せた飛球は左翼線後方に伸びた。栗山は打球の行方を目で追いながら、フォロースルーのタイミングで一瞬だけ間を置いた。手応えがあったのかもしれない。
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