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【動画】「マウスピースがない!」デビュー戦で敗北、2度目の世界挑戦では大ピンチに――セレス小林はいかにして“不屈の心”を育み世界王者となったのか《飯田覚士対談・前編》

2026/06/17
 プロボクシング元WBA世界スーパーフライ級王者の飯田覚士さんが、往年の名ボクサーたちと昔話に花を咲かせるとともに今のボクシング界についても語り合う「Champion's Room」。第3弾のゲストは元WBA世界スーパーフライ級王者・セレス小林こと小林昭司さんです。
 デビュー戦で敗れ、5戦目まで3勝2敗、日本王座には3度目のチャレンジで就き、世界も2度目の挑戦でベルトを手にした〝不屈の人〟です。実は小林さん、世界を獲った一戦の裏で〝自分のマウスピースがどこにもない〟という最大のピンチにさらされて……。《後編も併せてご覧ください》

  2001年3月11日、神奈川・横浜アリーナ。

 セレス小林さんが4階級制覇のベネズエラ人ボクサー、レオ・ガメス選手にチャレンジするWBA世界スーパーフライ級タイトルマッチ。2度目の世界挑戦という背水の陣なのに試合前、自分のマウスピースがないことに気づきます。

「ウチ(国際ジム)のトレーナーが間違えて、後輩のマウスピースを持ってきたんです。〝これ、合わないです〟と言って、(試合中に)控室まで行ってもらって持ってきてもらったら、それも予備のものでした」

2001年3月、WBA世界スーパーフライ級タイトルマッチで王者レオ・ガメスに右フックを叩き込む ©KYODO
2001年3月、WBA世界スーパーフライ級タイトルマッチで王者レオ・ガメスに右フックを叩き込む ©KYODO

 チャンピオンは強烈なアッパーを武器にしており、いつも使っている愛用のマウスピースでなければダメージを余計に大きくしてしまう可能性もありました。

 テンパってしまうかと思いきや、逆に小林さんは「誰よりも冷静だった」と言います。

「あんま気にしてなかったんですよね。しゃあねえ、これ着けるかって」

「不安とか負けるとか、そういう気持ちは一切なかった」

 冷静さを失わなかったのは、「絶対勝てる」という境地に達していたことでした。

「(その前の世界戦で)引き分けて、これだけやっても(世界に)届かないなら、もっとやるだけ。究極に追い込んで、トレーナーの三浦(利美)さんが『今度は勝てるかもしれない』と言ってくれたんです。普段は決してそんなこと言わないのに(笑)。前と違って、眠れないこともなくなった。こんだけやったんだから、不安とか負けるとか、そういう気持ちは一切なかったですね」

 9ラウンドにガメス選手の右を浴びて「ちょっとやべえ」と思いながらも、逆に相手はチャンスだとばかりに前に出てくると踏み、次の10ラウンドに左カウンターを合わせて前のめりにダウンさせ、TKO勝ちを収めました。ピンチにも動じないメンタルが、世界のベルトを手繰り寄せたと言えます。

10回、左ストレートでガメス(左)をリングに沈めTKO勝ち ©KYODO
10回、左ストレートでガメス(左)をリングに沈めTKO勝ち ©KYODO

 前編の動画では以下のトピックについても触れています。

  • 自信満々だったのに4R判定負けのデビュー戦
  • 悔し泣きした敗戦から得た教訓
  • 大橋秀行さんに憧れてプロボクサーに
  • オーバーワークだった初防衛戦
  • どうして初防衛戦は難しいのか?
  • 〝怪物〟ムニョスとの激闘

 2度目の防衛戦の相手は21戦全KO勝利中だったアレクサンデル・ムニョス選手。計5度のダウンを奪われて王座から陥落することになりますが、逆にぐらつかせて相手を追い込む見せ場もありました。

「もうちょっとでしたね。効いたって分かったんですよ。でも足がもう動かないんですよ。踏ん張れないし、自分も効いちゃっていて。玉砕覚悟で行ったら、返り討ちにされました」

 苦笑いを浮かべる小林さんに、WBA世界スーパーフライ級王者の先輩でもある飯田覚士さんは「倒されても最後まであきらめない」姿勢に心から敬意を表します。

 最後の最後まで不屈の心を忘れないセレス小林さんは、記憶に残る名ボクサーでした。(5月18日取材)

Takuya Sugiyama
Takuya Sugiyama

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photograph by KYODO

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