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「私も助けるから、あなたも助けてよって」なでしこ主将・熊谷紗希の“壁なし”リーダー術とは?<W杯では「涙の選手ミーティング」も>

2024/02/20
昨年W杯ベスト8に進出したなでしこの主将・熊谷
主将に任命されて7年の歳月が流れた。チーム一丸となって勝利を掴むという明確な理想像を追い求め、積み重ねてきた試行錯誤がいま、結実しつつある。昨年のW杯ベスト8進出の陰には、自ら提案した一つのアイディアがあった。

 熊谷紗希は壁をつくらない。

 2011年のドイツワールドカップ優勝、澤穂希、宮間あやに次ぐ代表キャップ数、リヨンでの女子欧州CL5連覇、そしてなでしこジャパンのキャプテン……。圧倒的な実績と肩書きを近寄り難いハードルとせず、逆に自分からどんどん歩み寄っていくのが熊谷のスタイルである。

「みんな遠慮なく何でも私に言ってきますよ。年の差があっても私は別に気にしないし、それで話しやすいのであればそれはもう全然ウェルカムなので」

 飾らないキャラクターはリモート取材ながらストレートに伝わってくる。チーム全体に壁がなければ風通しもいい。裏表なく、気兼ねなく、忖度なく本音でぶつかり合えるチーム。それが昨夏のオーストラリア、ニュージーランド共催女子ワールドカップでベスト8まで躍進したなでしこジャパン最大の強みだった。

「年齢関係なく、ちゃんと意見を言い合えるっていうところをキャプテンに就任した当初から目指してきました。そういった意味で凄くいいチームだったなって自信を持って言えます。いかなるときも本当にみんながチームのために動けて、考えて言葉を発せてというチームではあったかな、と」

GS初戦前日の選手ミーティングで本当に“チーム”になれた。

 主語は「私」ではなく「みんな」。全員でつくり上げたという自負が彼女にはある。しかしいきなり熊谷の理想にたどり着いたわけではない。一人ひとりとコミュニケーションを取りつつ、分かり合いつつ、その輪を広げていきながら本大会を迎えていた。それでもチームが一つになるにはまだ何かが足りなかった。結果的にそれを埋めることになったのがザンビア代表とのグループステージ初戦前日に熊谷が呼び掛けて行なった選手ミーティングだ。

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photograph by Getty Images

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